あらすじ・概要
人類が地球に住めなくなった世界。人々はコクーンと呼ばれる宇宙上のコロニーに住んでいた。幼形成熟(ネオニティ)で成長が遅いアラタ、ターラ、シーザー、ルイの四人は、祇園という女性と出会う。彼女はダフネ―症という奇病にかかり、16歳までしか生きられない運命だった。
人間関係に翻弄されるSF
人間関係がドロドロ。でもそのドロドロっぷりにリアリティがあるのが面白いです。
基本的には善人でも、ちょっとした行き違いやプライドや思い込みで人に不実な態度をしてしまう、というのが「人間」という感じで生々しいです。
序盤のターラのずるいところ、潜在的に意地悪なところにウワーっとなるんですけど、一方でターラ自身も周りのずるさに振り回されているところがつらいな……と思います。
そんな四人組のややこしい感情も最後には清算されて、ダフネー症であるジジのために結束します。今までの彼らのごたごたを見てきた身としては感慨深かったです。
SFとしてもガッチガチに設定が決まっていて面白かったです。
コクーンというコロニーの設定、幼形成熟のネオニティや、人間関係を契約によって形作る社会。
特に契約社会のシステムは印象的でした。「親友」の第一パートナー、キスをする関係の第二パートナー、生活を共にする第三パートナーという契約の他に、会社で友人を作るにも私的な友人を持つにも契約が必要です。
実質的な伴侶である第三パートナー以外とも生殖ができるため、同性愛者であることが今の時代よりハンデにならないところも面白いです。実際、主人公四人のうちシーザーは同性愛者です。
ただ、性の多様性は現代より認められているけれど生殖中心主義は変わらず、「役に立たない」と見なされると安楽死されてしまいます。ディストピア……。
ディストピア、人間ドラマ、恋愛もの、ハードSFといろいろな要素が詰まった作品でした。8巻とは思えない濃さです。面白かった!