あらすじ・概要
長野の丸子実業高校で、バレーボール部の男子部員が自殺した。母親、高山かおりはいじめが原因だと怒り狂い、高校を相手取って裁判を起こす。だが、母親の主張のほとんどは虚言だった。丸子実業は逆に母親を訴え返し、部員と学校の無実を証明しようと団結する。
結局一番の被害者は自殺した生徒なんだよね
怖い……おそらく精神的な病理があるんだとは思うんですが、「この女性どうすればいいんだろう」と思うくらい怖いです。
自分と対立する意見が許せず、すぐ激昂する、恐ろしいほどの虚言癖がある、他人を巻き込むことをためらわない、まさにモンスターです。
「裁判で勝つ」という結果がわかって読んでいるからそこまでつらくなかったですが、そうでなければホラー並みに怖かったと思います。
読んでいて腹が立つのは、事件を報道するマスコミの杜撰さ、「ウケる」ニュースにするための恣意的な情報操作です。
しかし、いじめ自殺のニュースが入ると必ずと言っていいほどTwitterのトレンドに入ります。トレンドを開くと何も知らないのに保護者を無条件でかばい、学校や教師を非難するツイートであふれています。
何だかんだで、わかりやすい物語、勧善懲悪の物語を望んでいるのは視聴者の方なんですよね。
この本が批判しているのは高山さおり本人だけではなく、「わたしたち」でもあります。十分情報が出ないうちにニュースに安易なコメントをするのはやめようと思いました。
本の中に何度も書かれているように、一番の被害者は自殺した男子生徒です。彼がどうして自殺したのかは永遠にわかることはないですが、モンスターのような母親のことは原因のひとつとしてあったでしょう。
裁判には勝ちましたが、やるせない気分になって読み終えました。
読んでいてちょっと感情的だなと思う部分もありましたが、この手の事件はだいたい保護者ばかりがかばわれるので、こういう本もあっていいかなと思います。