ブックワームのひとりごと

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自動販売機の付喪神と人間の恋物語―二宮酒匂『幼馴染の自動販売機にプロポーズした経緯について』

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幼馴染の自動販売機にプロポーズした経緯について。 (カドカワBOOKS)

 

あらすじ・概要

神社の跡取り息子である主人公は、自動販売機の付喪神と出会い、子ども時代を共にする。交流の中で付喪神に恋をしたことを自覚し、叶いそうもない恋に悩む。一方で、耐用年数を大きく超えた自販機は、その寿命が尽きようとしていた。主人公は何とか自販機を延命させようとするが……。

 

田舎描写や神職描写が面白い

大変わかりやすい作品でした。自動販売機の付喪神に恋をした主人公が、紆余曲折あって恋を成就させる話です。

おおよそ予想通りに話が展開しますが、そこに挿入される田舎ならではの描写や主人公の実家である神社の仕事がいい味を出していました。山の中でけがをしたり、イノシシ狩りをしたり、自然の多いところだからこそ起こるできごと。跡取り息子として神職を目指す主人公だからこそわかる付喪神のなりたち。設定とストーリーが上手くかみ合っています。

 

あと脇役である主人公のちょいヤンキーな女友達がかわいいんですよね。あっさりしていてたくましくて、主人公に恋をしてふられても元気で。

恋心から友情へさらっとシフトして主人公にあと腐れなく接するところが逆にかわいかったです。横恋慕でもドロドロしていないんですよね。

 

異種間の関係萌えとしては作品のオチはあまり好きではないです。ただ、異種なことを置いておいてふたりの関係性の行きつく先としてはアリかなあと思いました。

神社の跡取り息子として結婚し血を繋がなければならない主人公と、普通の状態では人間の世界で生きられない自販機とのハッピーエンドを追求すれば、まあそうなるよね、という。

 ハッピーエンドであることは確かなので、ハッピーエンド至上主義者にはよさそうです。