あらすじ・概要
第二王子と男爵令嬢の恋路を邪魔したという罪を着せられ、太った男のモンテナハト卿アロイスに嫁ぐことになったカミラ。カミラは太った男との結婚は嫌だとアロイスを痩せさせようとする。しかし国中に悪名をばらまかれたカミラは、モンテナハト領でもやっかいもの扱いだった。
人間の描き方がフェアでいい
読者から主人公の好感度を上げるうえで、「実はいい人なんです!」という路線ではなく、「貴族社会ってのは陰謀や策謀が普通だし主人公だけが性格悪いんじゃないんだよ」という路線に持っていくのが面白いです。
主人公のカミラはたまにいいところは見せますが、短気なところがあったり図々しいところがあったり、決して完璧なヒロインではありません。でも周囲の人間もそれなりに欠点や悪意を抱えていて、カミラだけが特別性格が悪いわけではないことがわかります。人物描写のバランスがいいんですよね。
実際カミラが怒るシーンには理由がきちんと設定されていて、「そりゃブチ切れるわな……」と納得できるのでカミラにはそれほど腹が立たないんですよね。キレたことが悪手であっても、キャラクターの心の動きは理解できます。
ヒーローであるアロイスも一見太ったお人好しの人間のように見えますが、話が進むにつれ結構したたかで思慮深い男だということがわかります。
そんなふたりがときに諍いを起こしながら少しずつ信頼関係を結んでいくところが、読んでいて楽しかったです。
政略結婚がテーマですが今のところ甘い恋愛要素はほとんどありません。カミラとアロイスは恋愛相手というより相棒みたいな感じ。そのあっさりした感じがいいですね。
一冊の本としては盛り上がりに欠けるところがあったり、文章が読みづらかったりするなど、評価を下げざるを得ない部分もあります。しかしこういう人間観がフェアな女性向け作品は久しぶりに読んだので嬉しかったです。