あらすじ・概要
「ぼく」こと幸彦は友人の綾瀬に崖から蹴落とされ、二度とバスケットボールができない体になった。他人の哀れみや家族の怒りになじめず困惑する中、科学少年中川や眼帯少女かごめと出会い興味を引かれる。そんな中、幸彦は周囲が謎の共感や優しさを持つようになっていることに気付き……。
スケールが大きくてなんかよくわからんけど感動できる
男女CP好きなのもあって、男と男の関係性コンテンツにはそれほど興味がないんですが、これは例外的に好きです。
ファンタジーというより幻想小説なので、不合理な展開やわけのわからない展開が多いです。でもそこがいい。
空を泳ぐ魚、邪眼を持つ少女、周囲の人の謎の優しさや共感、それらはすべて主人公と彼を崖から蹴落とした友人の関係へと集約していきます。終盤にかけてスケールが一気に大きくなり、ストーリーもキャラも飲み込んでしまい、読み終わると「なんかよくわからんけど感動した」という感情を持ちました。
描写の奔流に押し流されることができれば楽しいと思います。
しかしとにかく感情がでかい。愛が重いとかそういうのじゃなくて……大きいんですよね。比喩ではなく。
その上キャラクターが変てこで楽しいです。特に霊界と通信しようとする科学少年中川の人たらしっぷりがやばい。ふわふわしていて無責任で、でも唐突に現実的で。回りくどい優しさにくらくらして。現実にこんなキャラいたら間違いなく悪い意味で好きになってしまいそうです。
不思議な力を持つ眼帯少女かごめも、暴言で登場人物の悪いところ全部言ってくれるからスカッとしていいです。彼女自身もかなり問題がある女の子ですが、男性陣もろくでもないのであまり気になりません。
ただ評価低いのもわかります。わけがわからないから。個人的にはこういうライト文芸みたいな表紙にしたのが悪かったと思います。これは幻想小説であってキャラクターに萌えを感じるような作品ではないから。単行本の挿画のほうが世界観をよく示していると思います。