ブックワームのひとりごと

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強迫神経症になって自分が信じられなくなった人の絶望とその治療―菊晴『几帳面だと思っていたら心の病気になっていました』

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几帳面だと思っていたら心の病気になっていました (コミックエッセイ)

 

あらすじ・概要

几帳面で心配性だった著者。しかし鍵や火元の確認、手洗いなどを妄執的にやってしまうようになった。不安が過ぎてひきこもってしまった著者は、心療内科を受診する。そこで得た診断は「強迫神経症」だった。著者は病気を克服するためいろいろな方法を試す。

 

心理描写がめちゃくちゃ怖いだけに後半にはほっとした

著者が描く心理描写が秀逸で、ただの「心配性」がどんどん悪化していくさまは怖ささえ覚えました。

自分で見たもの、触ったものが信用できなくなっていく恐ろしさ。著者はきちんと鍵をかけても、虫がいないよう野菜を洗っても、「危険な要素があるのではないか」と延々と悩んでしまいます。

 

著者の家族はかなり病気に理解があり、病気ゆえにパニックになったり怒ったりする著者に優しく接します。

しかしこんなに優しい両親をもってしても、それで病気が治るわけではないのがシビアですね。

やはり精神疾患には家庭環境だけではなく、他の要素も大いに関わっているんですねえ……。

 

前半の描写が真に迫っていたゆえに、後半の著者が病気と向き合い、少しずつ対策を取っていくところには安堵しました。

道のたばこを踏み消して回るのには全速力で走ると地面が気にならない、とか、接触への恐ろしさは手袋をする、とか、行動を変え、恐怖や不安と付き合い改善方向へ向かうことを目指します。

最後は明るい感じで終わってほっとしました。面白かったというよりお疲れさまと言いたいです。