あらすじ・概要
甘いもの大好きな大学生川嶋と、政治家を目指す天然娘柴田は、天才パティシエの熊谷をスカウトしてさびれた駅前に店を構える。しかし熊谷は正直すぎるひねくれもので周囲と軋轢を生む。それでも何とか店を維持しようとする三人。ある日舞い込んだのは、テレビ局からの出演依頼だった。
テンポが軽妙でキャラクターも面白い
とにかく作品のテンポが速く、常に読者を飽きさせない内容です。そんなのありかよ! と思いつつ、この軽妙なテンポでいろいろ許してしまいます。
すごくせりふが多い漫画なんですが、そのやりとりの面白さにこれはこれで楽しくなってきます。
基本のノリはトンチキギャグなのですが、よく見るとちゃんとキャラクターも作り込まれていることがわかります。
例えばパティシエである熊谷は思ったことをすべて言ってしまうタイプで周囲としょっちゅうけんかをしていますが、読み進めるにつれて正義感の深い男だとわかります。「できない」と言われたことをやりたくなるひねくれものっぷりも、最初から決めつけてあきらめることが嫌いなのだろうなと思います。
天然そうに見えてタフで未来志向の柴田、東大生というブランドを蹴ってスイーツの道に入る川嶋も、すごく魅力的。
脇役も個性豊かだし、悪役ですら憎めない一面を持っています。キャラクターがテンプレ的ではないんですよね。
そして「スイーツで地域活性」というテーマも一貫して保たれていて、メインキャラクターたちは立地している町のことを深く考えています。ベースになる価値観が揺らがないのがいい。
恋愛要素は控えめだけど、個人的には「どう考えてもこいつ当て馬だろうな……」と思ったキャラクターにフラグが立ったのが印象的でした。でも、終わってみると作品の中で成立するのこのふたりしかないなと思えます。我が強い人間同士がやり合いながら一緒に生きていくのでしょうね。
完璧な作品ではないし、ツッコみどころも結構あるんですが、元気の出る漫画でした。面白かった。