あらすじ・概要
運び屋を営んでいる少女・マイカと母ミリの元にハヅキという男がやってくる。彼は宇宙船が次々と消える場所・シャハイに運んでくれと依頼する。お金に困っていたマイカはそれを引き受けた。しかしハヅキの母で研究者だったシマと、ミリとは、特別な関係があったようで……。
母親たちが母親として子どもを大人にするまで
はっきり言って上手いとは言えない作品でした。構成に粗があるし、視点もころころ変わるので誰が何をしゃべっているのか混乱します。おすすめはしがたいです。
でも私この作品好きですね。なぜかというと、「女は子どもを持つと自動的に母親になれるわけではない」ということを書いているからです。
ミリは自分の特殊な素性から、「他の人間のように当たり前の母親にはなれない」と思っているし、ハヅキの母シマは研究者としては優秀ですがコミュニケーション能力に難があり、ハヅキにきちんと愛情を与えることができませんでした。
これはマイカとハヅキを狂言回しとした、未熟な母親たちふたりが母親になろうとあがく物語です。
身体に不具合を抱えながらも親の役目を果たしているミリはともかく、シマはかなり問題のある親です。今だと毒親扱いされるでしょうね。でも私はシマのことが完全に嫌いにはなれなかったです。それは私もコミュニケーション能力に問題を抱えているからでしょう。
でもラストシーンで母親の呪縛から解消されたハヅキを見て、これでよかったと思うことができました。彼女の行いが許されるわけではないんですが、それでも区切りはつけられたのだなと。
設定は万人受けしないし、粗も多いんだけれど、根底にあるテーマやキャラクターの成長が好きでした。面白かった。