ブックワームのひとりごと

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何でも手に入る不思議な市場で、男が失ったものを取り戻そうとする―恒川光太郎『夜市』

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夜市 (角川ホラー文庫)

 

あらすじ・概要

いずみは高校の同級生、裕司に誘われてどんなものも手に入る場所、夜市に行った。

そこでは人でない者たちが店を出し、奇怪な商品を売っていた。裕司が夜市にやってきた理由とは……。表題作ほか、少年が不思議な道へ迷い込む『風の古道』を収録。

 

怖いというよりもおどろおどろしい、狂気というより幻想的な作品です。すらすら読める文体でありながら、夜市の光景がまざまざと思い浮かべられます。

そのまま幻想を突っ走るのかと思いきや、最後の最後であっと驚くオチがあります。その構成もこの作品に流れる幻想を強化していて美しいです。

 

同時収録されていく『風の古道』も、主人公である「私」を助けてくれたレンの素性が明らかになったときには「あー、そういうことね!」と膝を叩きました。普通の世界の倫理からは外れていることも含めて面白いです。ホラーって、こういう展開ができるから楽しいんだよな……。

 

また、「学校蝙蝠(がっこうこうもり)」や「永久放浪者」のような、作品中の造語がいい味を出しています。すでにある単語の組み合わせなのに世界観が感じられていいんですよね。

 

2編とも「現実世界の隣にある異世界」をテーマにしており、幻想とリアルが交錯する話が好きな人にはおすすめです。

何回も読み返している本だけれど面白かったです。