あらすじ・概要
閻魔大王に代わって悪人を地獄に落とす皓(しろし)とその助手の青児(せいじ)の元に、バラバラ殺人を予告する謎の手紙が舞い込んだ。その手紙に従って長崎の孤島に降り立つと、そこは人形作家、絢辻幸次の館だった。館には人形のように美しい女性と、彼女にまつわる思惑があり……。
マジヤバ感情と巨大感情の渦巻く館
今回も面白かったです。おどろおどろしい孤島! 人形の館! という舞台設定も最高だし、ストーリーもその舞台に合わせて面白く仕上がっています。
人形のような女性をめぐる男たちのマジヤバ感情にドン引きしつつわくわくしてしまいましたし、狂気の描写もおっかなくてどきどきします。魔族という人でなし存在達の倫理のなさも相まって、ぐっと世界観に深みが増しました。
一方で、うだつのあがらない男だが常識的な感覚がある青児、半分は人なので人の情けを知っている皓が主人公なので、一定のモラルは守られているんですよね。
狂気や邪悪な感情が渦巻く世界観で、ちゃんと「普通」の感覚もときどき差し込まれるのが安心します。安全装置のついたジェットコースターに乗っているような感覚でした。
正直「これは可能なのか……?」というトリックもあるんですが、ドラマチックで絵になる展開、愉快でおどろおどろしいキャラクターの描写、突拍子もないようでつじつまが合っている世界観があるので、多少の無理は気になりません。
男同士の巨大感情も普段はそんなに興味ないんですが、ちゃんと世界観やストーリーに根差してしっかり描かれているから、これもありだなと思えてきます。今回は本当にあちこちで巨大感情が発生していましたね。どれも物騒で楽しい。
しみじみと余韻を感じる作品で面白かったです。また読みたい。
余談だけれど登場人物紹介にキャラデザつけてくれるの嬉しいですね。皓のライバル棘(おどろ)が予想以上にうさんくさい見た目で笑いました。