あらすじ・概要
母親が「エホバの証人」に入信し、自らもエホバの証人に引き入れられてしまった著者。幼いころ頭に刷り込まれた価値観を、当たり前のものとして暮らしてきた。しかし信者の中では不真面目な夫と結婚し、子をもうけてから、少しずつ団体に疑念を抱き始める。
宗教のコントロールから抜け出すまで
日本では特定の宗教団体を名指しで批判することは少ないので、なかなか勇気のある本だと思います。
描かれているのはエホバの証人の閉鎖的な社会や体罰の肯定、極端な娯楽の規制など。子どもをこういう社会に閉じ込めるのは心が痛みます。
私自身には信心がないけれど、宗教に救いを求めること自体は否定できるものではないと思っています。それでも自分より立場の弱い人間に価値観を押し付けたり、コントロールしようとしたりするのは違います。
著者は子どもの病気をきっかけに、エホバの証人とはっきり決別することになります。エホバの証人は輸血を否定するため、信仰を捨てなければ子どもを救えませんでした。追い詰められた著者が決断するシーンは心が動かされました。
しかしエホバの証人の人たちは、表面上は優しい人が多いのが悲しくもあり恐ろしくもありました。その優しさが嘘だとは思わないけれど、根本的に価値観がずれているから話がかみ合わないんですよね。これはコロナウイルス陰謀論の話にも似ています。
著者はたまたま自分で気づけたからいいけれど、信仰に溺れた人は一生そのままの場合も多いのでしょうね。