ブックワームのひとりごと

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大阪から東京へ逃れた男がタクシーの運転手になって路上を巡る―梁石日『タクシードライバー日誌』

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あらすじ・概要

事業に失敗し、逃げるように大阪から東京へやってきた著者。彼が就いた仕事は、タクシードライバーだった。面倒な客とやりやったり、事故に巻き込まれたり、タクシードライバー同士の奇妙な人間関係を観察したり。ハードな仕事を、淡々とした筆致で描き出す日誌風エッセイ。

 

タクシードライバーたちのだめでやるせない日常

書かれたのが昔なのもあるけれど、全体的に倫理がないエッセイです。現代に書かれてたら引いてるところでした。書かれて時間が経った作品だからこそ客観的に見れる作品ってありますよね。

 

逆都落ちのように大阪から東京に流れてきた著者も含めて、登場するタクシードライバーは訳ありの人間が多いです。離婚歴があったり、博打癖があったり、酒を飲めば殴り合いのけんかをしたり。

男社会のだめなところ全部煮詰めました! みたいな仕事場で、正直あまり関わりたくない部類の人々です。現代もこうってわけではないでしょうが、「すぐなれるけど過酷だし都合が悪くなればすぐ職を失う仕事」となると訳ありの人間が集まりがちになるのでしょうか。

 

タクシードライバーもだめですが客の方もどっこいどっこいで、著者はしょっちゅう嫌な客に出会っています。故郷を離れて東京の路上を駆け巡りながら、ろくでもない人々を乗せて、毎日働く。ハードボイルド小説のような話ですが、物語ほどロマンチックではありません。

 

前述したように著者もそれ以外も倫理のない行動をするのだけれど、語り口がクールで淡々としているのであまり熱くならずに読めました。でも伴侶のことは大事にしてほしい。私は女だからつい奥さんの肩持っちゃうんですけどね。

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