あらすじ・概要
巷にあふれるデマ・フェイクニュース。コロナ禍も相まって、真実を知ることはますます困難になっていく。ニュースを受け取る人々は、どのようにしてその良しあしを判断すればいいのだろうか。新聞記者であった著者が、メディア内部の事情を解説しつつ、過酷な情報化社会の歩き方を模索する。
手加減をせずにニュース・リテラシーについて学ぶ
ちくまプリマ―新書は高校生~大学生くらいの青年期の人々を対象としているのですが、この本はそんじょそこらの大人向けの新書より難しいです。
ただ、確かにこれは「学生が知るべき話」ではあるので、手加減をせずにちゃんと書こうとしてくれた著者に好感を持ちました。
「報道によって社会をいい方向へ変えたい」と願いつつ、マスメディア内部の事情から、それが達成できない記者たち。記者であった著者自身のエピソードも明るいものばかりではなく、特ダネを求めるあまりに、政府の人間に乗せられ、うっかり体制側の記事を書いてしまった苦い経験もあります。
この世のすべてのニュースを紹介することができない以上、そこには優先順位がつけられます。しかしその優先順位は誰が決めるのか……。今の優先順位は正しいのか。伝える側の苦悩が垣間見えます。
結局受け取る側が賢くなるしかないのだ、というのは正論ですが、賢くなろうとした結果、陰謀論の方を信じてしまう人もいます。どこまで信じてどこまで疑うか、は本当に難しいです。
なるべく色眼鏡を外して、自分が好きな人だって嘘を言うことがあるし、嫌いな人だって本当のことをいうことがある、ということをしっかり認識しておかなければならないのだと思います。
この本を理解できる人はすでにリテラシーがあるだろう、というのはありますが、コロナ禍の時代に読んでほしい新書でした。