あらすじ・概要
今は介護の仕事をしている元ヤクザ。著者が聞き取った彼の半生は、犯罪と裏社会の人間関係で満ちていた。ひとりの元ヤクザの人生を語りつつ、ヤクザを離れた人々のその後を考える。暴対法によってヤクザを排除しつづける社会は、本当に安全な場所なのだろうか……。
ヤクザを排除した先に待っているもの
タイトルと帯で損している本です。このタイトルだとがっつり介護の話があると思うじゃないですか。少ししかありません。何でこんなタイトルにしたのだろう……。
ヤクザから介護の仕事に転身した男の半生が半分、それを受けての元ヤクザの社会復帰を考える文が半分の新書です。
前半の部分は方言(福岡弁かな?)を交えて語られるヤクザの社会が面白く、興味深く読みました。ヤクザのお茶くみについてのくだりはすごく面白かったです。序列が厳しいとお茶をくむのも一苦労ですね。
ピンハネや風俗への紹介、覚せい剤など、ヤクザのシノギがどんなものなのか具体的なイメージを持てたのもよかったです。普通に暮らしているだけではぴんとこないですからね。
後半は雰囲気ががらりと変わって、元ヤクザたちの未来を憂える話になってきます。暴対法によって、とにかく排除され続けるヤクザたち。組を抜けても、なかなか就職できなかったり、再就職先でいじめに遭ったりしています。著者は彼らを受け入れる場所が必要だと説きます。
面白いのは、ヤクザを抜けた人の中に他の元ヤクザを支援し就職先を探すボランティアのような人がいることです。こういう人たちは元ヤクザたちにとても慕われているようです。
私はヤクザは嫌いだけれど、犯罪者が社会復帰できなければまた犯罪が生まれることも確かです。悪いことをした報いを、社会で働きながら引き受けることも可能だと思います。
テーマがテーマなので、著者はヤクザに同情的であり、ヤクザの犯罪の怖さにはあまり触れられません。しかし彼らの人権を守る人が少ない以上、こういう内容の本があってもいいと思います。
すごく面白い新書でした。