ブックワームのひとりごと

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婚約が破談になった女王はひとりで子どもを身ごもろうとする―木野美森『夫なんていりません! 女王陛下の秘密の妊活』

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夫なんていりません! 女王陛下の秘密の妊活 (DIANA文庫)

 

あらすじ・概要

女王のフェイリールは、婚約者である隣国のケネス王子と妹の逢瀬を目撃してしまい、そのまま婚約が破談になる。二度も婚約を破談にしてしまったことを思い悩んだフェイリールは、結婚せずとも世継ぎを身ごもってしまえばいいと思い、妊娠のため行動を始める。

 

登場人物の倫理が好ましい優しい作品

尖ったあらすじに惹かれて読み始めたんですが、予想以上に面白かったです。

ちなみにエロを想起させるタイトルだけどエロいシーンは一切ないので安心してください。

 

まず主人公カップルであるケネスとフェイリースが真面目で好感度の高いキャラクターなのが安心して読めます。善人であっても押しつけがましい感じではないし、真面目さがときに変な方向に行ってしまって笑えます。女王とその補佐として国民のこともちゃんと考えています。

ふたりとも真面目過ぎて全然甘い雰囲気にならないんですよね……。

 

甘くないといっても要所要所で彼らの信頼を垣間見ることができます。フェイリースが叔母ともめたときにケネスが助け船を出しますし、ケネスが自分の命令に従えない瞬間があっても怒ったり責めたりせず冷静でいるフェイリースも偉い。

甘くはないけれどそこにはちゃんと信頼と情があるのを感じます。

 

そして展開上の悪人はいるけれど、そういう人たちが極端に不幸せになることがないのは安心しました。ご都合主義ではあるけどこういう優しい話もあっていいと思います。

やりすぎだろう、という因果応報はありません。

 

展開に短絡的なところや説明不足なところはあるんですが、キャラクターとその倫理観の書き方が上手く、すごく趣味に合う作品でした。