あらすじ・概要
東京のどこかで、定職につかずぶらぶら貧乏生活をしているコースケ。たまに大家の手伝いをしたり、部屋に彼女がやってきたり、隣の学生と交流したり……。昭和後期の日常を、丁寧な筆致で描く連作短編。
起伏がないのに面白い漫画
話に起伏がなく、ただただうだつの上がらない青年の貧乏暮らしを描いているだけの漫画なんですが、これがどうして面白いんですよね。
この時代には私は生まれてなかったんですが、無条件に「懐かしい」と思ってしまうような表現です。
絵柄は古いですが描き込みは丁寧で、当時を知らない私にもリアリティを伝えてくれます。
主人公は定職にはついていないけれど、ちょくちょく近所の人々の手伝いをしていて、地域には必要とされています。そのやわらかいけれど確かなつながりが、読んでいてほっこりしました。
現実にはなかなかこういうご近所付き合いはないだろうけれど、作品の中には夢があっていいと思います。
しかしこういう作品は現代を舞台にすると無理でしょう。不況が長引いた現代は「貧乏でも何とかなるだろう」という漠然としたポジティブ思考を持ちにくいです。古き良き時代という概念はそういう漠然としたポジティブ思考でできているのかもしれません。