ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

半人前杖職人は魔女の謎を追う―筑紫一明『竜と祭礼2―伝承する魔女―』

このブログには広告・アフィリエイトのリンクが含まれます。

竜と祭礼2 ―伝承する魔女― (GA文庫)

 

あらすじ・概要

姉弟子ラユマタの要請によってイクスは王城の杖壁が壊れた件についての調査をすることになった。それは「魔女」と呼ばれる存在が関わっているらしい。イクスはユーイとその学友ノバとともに、魔女の言い伝えが残る土地におもむく。そこにはイクスの出生の秘密があった。

 

唯一無二の作風をしているだけに減点要素が多いのが惜しい

イクス、口と態度は悪くていけすかないやつだけれど、さりげなく不器用な思いやりがあったり出生への思い入れがあったりで、ハードボイルド小説の主人公っぽさがあります。ライトノベルの主人公としては珍しい造形で面白いです。

 

ストーリー自体ももっと感動的にもお涙頂戴にもできるでしょうが、あっさり始まってあっさり終わるところが大人っぽくて上品でした。もちろんそこに感情がないわけではなく、キャラクターたちの葛藤や愛情がいっぱい詰まっているんですけど、あえて詳細には書かないところが心地いいです。

うさんくさい読師が実は……だったり、もうすぐ死んでしまうようなおばあさんの過去だったり、「そういうことなんだろうな」と想像できる程度の描写なのがよかったです。

 

ただやはり、唯一無二の世界観や人間観をしているからこそ、減点要素が多いところが残念なんですよね。構成とか、描写とかもっと練れるのにと思ってしまいます。

多分書き慣れれば化ける作家だと思うので、今後がんばって新作を出し続けてほしいです。