ブックワームのひとりごと

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読んでいて人間の愚かさに嫌な気持ちになる短編集―米澤穂信『満願』

満願(新潮文庫)

 

あらすじ・概要

殺人を犯した女性の家にかつて下宿していた弁護士は、彼女の弁護を試みるうちに、彼女の本当の目的に気づく。表題作「満願」ほか、人間の弱さや愚かさを描いたミステリー短編集。

 

人類は皆愚か

読み終わってすごく嫌な気持ちになる作品ばかりです。こういう嫌なミステリを書かせたら米澤穂信は本当に一級品ですね。

しかし嫌な気持ちになるにはなるんですけどぎりぎりに特定の層へのヘイトにはなっておらず、「人類は皆愚か……」という着地点になるので安心して読めます。最悪なんだけどエンタメとして受け止められる範囲の最悪さ。

 

個人的に好きなのは最初の作品「夜警」。警察官が警察官の素質と言うものに悩む話、そしてその素質を示すような事件が起こる話です。警察官の素質がある人ばかりではなくて、そうではない人には辞めてもらったほうがいい。でも「辞めさせる」側にも警察官の素質はあるのだろうか……と悩む主人公が印象的でした。

もしかしたら誰にも警察官の素質なんてないのかもしれない、それでも警察は必要だからやるせない気持ちになりました。

 

表題作「満願」はアンソロジーに載っているのを読んだのでこれだけ再読。表題作を最後に持ってくるのってなかなか見ませんが、この場所で正解だった気がします。犯人が叶えた「願い」とは何だったのか……をしみじみ考えるのは最後の一話がふさわしいですね。