あらすじ・概要
海洋生物学者を目指す青年、恒夫は、車いすの女性ジョゼと出会う。アルバイトとしてジョゼの世話をすることになった恒夫だったが、わがままなジョゼに振り回され辟易する。しかし恒夫がジョゼを外に連れ出したことから、ふたりの関係は少しずつ変わり始めた。
良く作られているけど好きなところも嫌いなところもある
作品としてはすごく頑張って作られてて、手抜きはしていないということはわかりますが、好き嫌いで言うと好きなところもあり嫌いなところもありという感じですね。
まず好きなところをふたつ挙げます。
ひとつは車いすであるジョゼの心理描写が丁寧であることです。ジョゼは一見わがままで奔放な女性に見えますが、ハンディキャップによって外の世界の悪意に怯え、反動として甘えられる人間にはとことん甘えてしまう人間として描かれています。
ジョゼが外の世界にあこがれる気持ちと、外の世界で戦っていくことを怖れる気持ちの間で揺れる過程には心が苦しくなりました。
もうひとつは大阪の描写にリアリティがあったところです。大阪を舞台にした作品ってどうしても「こてこての大阪」を書こうとしちゃうんですよね。実際そういうところもあるんですが、それは大阪のひとつの側面でしかありません。
この作品ではそういうステレオタイプな大阪ではなく、いいところも悪いところもある、普通の町として大阪が描かれていて心地よかったです。
関西弁で描かれる、キャラクターの独特のせりふ回しに大阪を感じてよかったです。
そして好きではなかったところは、主人公をジョゼの気持に気づかせるために事故に遭わせたところです。
足を失ってみないと歩けない人の気持ちがわからない、というのはそうなんですけれど、実際車いすの人の気持ちを理解するために足を失うことなんてできませんよね。
だから欲を言えば健常のまま、ジョゼの葛藤に気づいてあげてほしかったなあと。この辺はクオリティというより好き嫌いの問題かもしれませんけど。
問題の解決方法にうーんとはなりましたが、いいと思うところ、学ぶべきところはあったし、この作品を見たこと自体はよかったと思います。