- 妻は植物状態になってしまった夫にできることをしてあげたい『推しは目覚めないダンナ様です 低酸素脳症になってからの病院生活』
- イラストレーターの妻が過酷な抗がん剤治療に直面『ちびといつまでも ママの乳がんとパパのお弁当と桜の季節』
- がんが寛解したいいケースの一例『のほほん亭主、がんになる~ステージⅣから大逆転!~』
- 骨肉腫になった夫を支えた生活『夫が骨肉腫になりました』
- 漫画家、すい臓がんになった母親を看取る『ありがとうって言えたなら』
妻は植物状態になってしまった夫にできることをしてあげたい『推しは目覚めないダンナ様です 低酸素脳症になってからの病院生活』
著者の夫はある日突然心肺停止。治療は受けたものの植物状態になり、目覚めなくなってしまった。著者は病院へ夫に毎日会いに行き、話しかけたり、髪の毛を洗ったり、さまざまな介護をする。不安や後悔が入り混じる日々の中で、「できること」を探し実践する。
境遇自体は過酷ですが、漫画としては明るいタッチで、しかも植物状態でほとんど何もできない夫に「かわいい」と声をかけられるくらい愛が深いです。だから深刻になり過ぎず、親しみを持って読めます。
植物状態になるとどういう治療を受け、看護やリハビリはどうするのか? ということが患者の妻の視点から描かれているのもよかったです。何となく植物状態になったら何もされないのかと思ったら、刺激を与えるためにいろいろな試みがなされることがわかりました。
植物状態なので患者の反応は頭を振って嫌がったり歯を噛みしめたりすることぐらいなんですが、ひとつひとつの行動を噛みしめるように観察している著者が印象的でした。
イラストレーターの妻が過酷な抗がん剤治療に直面『ちびといつまでも ママの乳がんとパパのお弁当と桜の季節』
イラストレーターの柏原昇店。彼の妻が、乳がんであることがわかる。夫婦は、戸惑い悩みながら、抗がん剤治療を選択。つらく厳しい闘病生活が始まった。夫の視点から乳がん治療を描くコミックエッセイ。
あまりに壮絶な抗がん剤治療が読んでいてつらかったです。著者の妻は1週間に一度抗がん剤を入れます。薬剤を入れると数日起き上がれず、食べ物も口を通らず、子どもの面倒を見ることもできない。治療には必要なこととはいえ、体に毒を入れて毒を制すような方法です。
その分、抗がん剤投与から数日たつと起き上がることができ、家事も買い物も食事もできるのでギャップがあります。そういう体調に波のできる薬だとは知りませんでした。身の回りにがんの人がいたら「意外と元気じゃん」と思わないよう気を付けたいです。
著者自身も、子どもを三人抱えながら仕事をし、家事をこなし、妻の看病を行う生活に疲弊していきます。やっぱり闘病はその人個人の問題ではなくて、家庭の問題ですよね。
夫の視点から見た妻の闘病が興味深く、面白かったです。
がんが寛解したいいケースの一例『のほほん亭主、がんになる~ステージⅣから大逆転!~』
突然がんを告知された夫。妻である著者は、不安を抱えながらも闘病する夫を支える。がんについて情報を調べ、それから抗がん剤治療の開始。お金や保険の手続きをこなし、同居する姑と家事をやりながら、夫とともにがんに立ち向かっていく。
がん関連のエッセイには必ずと言っていいほど告知された時の葛藤が描かれているんですが、この作品では著者の義母、つまり姑もショックを受ける様子も描かれています。「いくらかかってもいい! 最新の治療を受けさせてもらいなさい(P14)」としっかりしたことを言いつつ、次の日は泣きはらした目で起きて来ます。その気丈さに少し泣けました。
著者の家は二世代同居で、姑と夫婦の居住スペースを分けているようなんですが、夫の病気をきっかけに一緒に食事を取ったり話し合ったりするようになったのが苦しみの中の救いでした。苦しみを分かち合う人がいると少し心が軽くなります。
がんの治療としてはうまくいったケースであり、患者である夫がタフで明るいので内容はあまり暗くありません。不安を抱えつつも、抗がん剤治療で髪の毛が抜けてもけろっとしていて、食欲がなくても一口でも食べようと試みます。みんながこういう風に立ち回れるわけではないでしょうが、読む側としてはほっとする描写でした。
骨肉腫になった夫を支えた生活『夫が骨肉腫になりました』
著者の息子が入院中、ひざの痛みを訴える夫。さまざまな検査をしても原因がわからず、ようやく腫瘍ができていることがわかった。すぐ帰れるはずだった手術の日、腫瘍が悪性であることが判明し、抗がん剤治療が始まった。骨肉腫になった夫と看護の日々を送る著者を描いたコミックエッセイ。
わかりやすくオチがある、構成がはっきりしているタイプのコミックエッセイではないんですが、これはこれでリアルでした。
日々の看病や、夫の実家の遺産争いの調停、出費に次ぐ出費で追い詰められていく著者。病気で苦しむのは本人だけではないのだなと改めて気づきました。
このコミックエッセイでは、手術が成功し一応は日常生活に戻れました。でも、最悪の事態になることもあるわけで……。そう思うと、激動の入院生活から死別へって相当きついでしょうね。
「周囲の助けで治りました!」みたいな話ではないのですが、エピソードが生々しくて参考になりました。
漫画家、すい臓がんになった母親を看取る『ありがとうって言えたなら』
漫画家である著者の母親が、すい臓がんだと告知される。余命は長くて1年。姉のいる大阪に母は移り、著者はそこへ何度も通う。世話をする姉につらく当たったり、いらいらしたり、死に追い詰められた母は変わっていく。
何気なく読んだ漫画だったんですが、最後に泣いてしまいました。
変人だったけれど強くて美しかった母親が、死が少しずつ近づいてくるにつれて理性を失い、見た目も痩せていって、変わっていく姿が読者の視点からもつらかったです。
そして死への不安から、いらいらしたり、周囲に当たったり、最後にはせん妄状態になったり、その精神状態は感動的とは程遠いです。著者と姉は振り回され、苦しみながら母親を看取ることになります。
そのリアリティが苦しくて、また泣けてきます。自分を守ってくれた親が、親らしくなくなっていくその時間、想像するだけで苦しいです。
以上です。興味があれば読んでみてください。