あらすじ・概要
30代で結婚に失敗し、懲りた著者は次の結婚生活を事実婚で行うことに。不満をため込んでしまった過去の結婚を反省し、「言いたいことは言う」家庭を作ろうとする。しかし、その努力も大変なもので……。不妊治療のあと妊娠し、夫とともに出産直後の過酷な時期を乗り越えていく。
「テンプレ的奥さん」に抵抗するために事実婚を選ぶ
「事実婚のカップル」のエッセイを始めて読んだので、その動機について、実際行ってみた感想について聞けるのは面白かったです。
著者が事実婚にこだわる理由は、過去の結婚で「テンプレ的な奥さん」像に自分を押し込めてしまったトラウマから。周囲にも、自分自身にも呪いをかけられないために、せめてもの抵抗として事実婚を選びます。
しかし妊娠して自治体の優遇制度を使ったり、母子別姓を成し遂げるために法律婚を一時的にやるくだりにはちょっと笑ってしまいました。堂々と制度を使う図々しさがあったほうがこの世の中生きやすいでしょうね。
著者は他人の目を気にしすぎでは、というところはあるんですが、「他人の目」といううすらぼんやりした何かに抵抗する手段として事実婚をしたいというのならそれはそれでいいのではないかと思います。夫と自分の間で線を引くことで、生きやすくなるならそれでもいい。
著者の夫のちゃらんぽらんで無責任なところにはおいおいと思うのですが、論理的な説明をされればちゃんと反省するし、論破されても不機嫌にならないところは、お似合いのカップルなんでしょうね。
家の中のことをこれだけ描いても許してくれるのも、信頼ゆえだと思います。
全体的に「自分とは価値観が違うなあ」という本でしたが、そういう人が考えていること、行動したことを知るのは面白かったです。