ブックワームのひとりごと

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女性におすすめの男性向けレーベルライトノベル7選【ガガガ文庫編】

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女性におすすめの男性向けレーベルライトノベル、今回はガガガ文庫編です。

電撃文庫編はこちら。

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卓球エリートの学校に入学したら氷のような美少女のダブルスパートナーにされた『ピンポンラバー』

怪我によって卓球界から姿を消していた飛鳥翔星は、小学生時代に出会った卓球少女を探すために卓越学園に入学する。そこは、卓球エリートたちがひしめく卓球のための学校だった。翔星は一年生最強の女子白鳳院瑠璃に敗北。彼女にパートナーになるよう持ちかけられるが……。

まず女の子たちの自我が強くて好きです。主人公が超えるべき壁でありダブルスのパートナーである瑠璃も、トレーナーとして翔星をサポートする椿も、自分の意思がはっきりしていて見ていて安心します。

翔星を始めとする男性陣に嫌なことをされたらきっちり嫌だって言うし、だからこそ軽口を叩き合っても失礼だな、とかイライラする、とか思わずに済みます。

翔星自身も「女に優しくするキャラ」として描かれていますが、「女に優しい」=「女を下に見ている」という路線ではなく、優しいというより尊重する感じなんですよね。そこがいい。

「お互いにほんのり好意があるが付き合ってない男女」が好きな身としてはぐっと来ました

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何重にも塗り固められた虚構のステージ『ハムレット・シンドローム』

事故により自分がハムレットだと思い込むようになった男、コマツアリマサ。彼が本当に狂っているのかどうかを確かめるため、ソフエは彼の住む城に潜入する。そこは、コマツが客人を巻き込んでハムレットを演じ続ける場所だった。

どういう小説なのかひとことでは言い表しにくい本です。それほど虚構と真実、嘘と本音、役柄と役者、舞台と観客の垣根がないんですよね。

読者である私が「こういうことかな?」と納得しかけたとたんに物語が逃げていき、何度も解釈の中で迷子になります。でも、それが面白いです。わけのわからなさが面白い。

読み進めていくほどに、この文章が誰の妄想なのか、あるいは現実なのか、わからなくなっていきます。メインストーリーだと思っていたものが、実はそれほど意味のないものなのではないか、あるいはこの物語に意味のあるストーリーなどないのではないか、と不安になっていきました。

メタフィクションが好きな人にはお勧めです。

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ライトノベル作家がしゃべる猫とともにつらい執筆生活『先生とそのお布団』

売れないライトノベル作家、石川布団。人の言葉を理解する猫「先生」とともに、今日もひたすら小説を書く。打ち切り、出版、また打ち切りと、出口の見えない戦いに疲弊していく布団だったが……。

読んでいて思うのは、布団が趣味で小説を書く人だったらこんなにも苦しまなかっただろうということです。

ひとりでも多くの読者に作品を届け、作品を作ることでお金を稼ぎたいと思った時点で、どうしようもない業を背負ってしまうんですよね。

布団は、ちゃんと就職して、ときどき同人誌を作る生活のほうが、平穏で安定した人生を送れます。でもそうしないということは、それだけ「たくさんの人に読まれたい」という欲求は鮮烈で、麻薬のようなものなんでしょうね。

文章を書く人間でありながら、あまり「小説家になりたい」という人の考えがわからなかったけれど、これを読んで、少しだけその頭の中を垣間見た気がします。

どうしようもなく心の中から湧いてくる。「読まれたい」という欲求の話でした。

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映画研究部にやってきた男装少女と三角関係『ボンクラーズ、ドントクライ』

二人でヒーローごっこをしていた映画研究部の「僕」とカントク。そこに男装の少女桐香が現れたことから、映画研究部は変わっていく。三人の淡い恋の行方はいったいどうなるのか……。

女の子一人、男の子二人の三角関係ストーリーなんですが、あまりドロドロはしていなくて、三人のかけがえのない日常がメインとして描かれていたのがさわやかでした。日常シーンが本当にかわいらしくて和みます。

悲恋といってもいい物語ですが、それだけではなく、少し希望をもって終わったのが素晴らしかったです。

主人公が部活仲間二人を大切に思っているところがいとおしくてよかったです。基本的に悪い人が出て来ない作品なので、読んでいて安心できました。

「これから」のことは読者の想像に任されています。だけど三人がそれぞれ、幸せな人生に向かって歩み出してくれるといいなと思います。

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ボーイ・ミーツ・植物魔獣『森の魔獣に花束を』

病弱なのに跡取りの試練として、森に入らなければならなくなったクレヲ。そこで出会ったのは植物の魔獣。彼女に食べられないために、クレヲは自分を好きになってもらおうと画策する。

まず何をおいてもロザリーヌがかわいいです。生肉を食べたり人間を襲ったりするんだけどとてもかわいい。

人ではないけれど人ではないからこそ素直なところがあって、ときおり見せるデレにきゅんきゅん来てしまいます。

お色気要素があるので苦手な人にはお勧めしませんが、ストーリー自体はかわいらしい少年少女のうれし恥ずかし恋物語です。

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冒険者、就活をする『犬と魔法のファンタジー』

冒険時代は遠い昔。宮廷大学に通うチタンは、就職活動に行き詰っていた。送られてくるお祈り手紙、内定を勝ち取っていく周囲。そんな中、冒険組合で飼っていた犬が原因不明の病気になり、気の合わない組合仲間のチアリーと原因を探すことに……。

ファンタジー世界に就活を足すという発想の勝利ですね。世の中にはいろんなファンタジーがあふれているけれど、就活ファンタジーというのはさすがに初めてなんじゃないですかね。一見わけのわからないネタですが、読んでみると意外と説得力があるのが恐ろしいです。

自分を殺してでもレールを行くか、自分が自分らしくあるために道なき道を行くか……。そういう悩みは人生の転換期には必ず向き合わなければいけないんですが、「就活」というテーマはそれを描くにふさわしいものですね。

ラストシーンで語ったチタンのせりふが一番良かったです。道なき道を行っていてもひとりではない。過酷な生き方を強いられるとしても、そう思える瞬間があれば少し救われます。

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「普通」に生きられない少女を「普通」を受け入れた少年が救う―田中ロミオ『AURA~魔竜院光牙最後の戦い~』

学校に忘れ物を取りに帰った少年、佐藤一郎は、リサーチャーと名乗る謎の女の子に出会う。しかしその正体は佐藤良子という一般女子。妄想をこじらせた彼女は異世界の住人を演じていたのだ。担任教師から脅されて良子の面倒を見ることになった佐藤は、クラスの半数を占める妄想戦士たちの奇行に巻き込まれることになる。

中二病をテーマにした作品ですが、作中に「中二病」というワードは出てきません。おそらくあえて使っていないのではないかと思います。

なぜかというと、この作品は「はいはい中二病」みたいなレッテル貼りに抗おうとする作品だからです。

確かに空想の中で遊ぶ少年少女は「イタい」。それは確かです。しかしながら、彼らは学校では「普通」に振る舞わなければならない、空気を読んで言葉のキャッチボールをしなくてはならない、という固定観念に苦しめられている子どもたちでもあります。

中二病の痛々しさ、みっともなさを描きながらも、なりたい自分を演じて遊んではいけないのか? 不思議や空想を心の支えにしてはいけないのか? と問いかけてきます。

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以上です。興味があれば読んでみてください。