ブックワームのひとりごと

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日常の中で男女が何気ないことで悩んだり救われたりする短編集―斎藤なずな『鳥獣草魚』

鳥獣草魚

 

あらすじ・概要

離婚後家に迷い込んだインコをかわいがっていたが、誤って踏みつぶしてしまった男。主人公と彼は当てのない旅に出かけ、そこであるものと出会う。男と女、家族生活、劣等感や優越感何気ない日常の悩みと救いを描いた漫画短編集。

 

 

とても漫画が上手い人の作品でした。非常にコマ割りや構図が美しく、ひとつひとつコマを読み進めるたびにため息をつきそうになりました。絵柄は古いものの、じっくり読みたくなる漫画です。

 

描かれている内容は何気ないものですが、その何気ないことで悩み、何気ないことで救われる、という話の作りに人生を感じます。日常の中でそうそうドラマチックなことは起こりません。でも登場人物はそこで確かに生き、日々努力したり悩みながら生きています。それは現実世界でもそうですよね。

 

個人的に好きな作品は「納戸の百合」ですね。成金の男の身の上話にしみじみ聞き入ってしまったし、最終的に結ばれてハッピーエンドにならなかったところがよかったです。恋愛的なオチではなくても、彼女は少し前を向けたんですね。

いらいらをためこみがちな専業主婦の話「黒猫」も面白かったです。日々劣等感や孤独感にさいなまれ、自分を見失っていた女性がやりたいことを取り戻す話です。そのきっかけが一匹の黒猫だというのもまたいい。

 

何気ない日常の切り取り方、人物の描写が非常に美しく、読んでよかったと思える短編集でした。