あらすじ・概要
富豪の家に生まれた山室真一は、自分が「厄」を持っており、自分の子を産んだ女性は死に至ることを知る。家を出てその呪いから救ってくれるという三千世という女性と出会うが、彼女は老けず、ものを食べなくても死なない体の持ち主だった。行き場のない者同士ともに暮らすうちに、真一は三千世を愛するようになる。
真っ当に優しい男が愛される話でいい
まず何より「真っ当に優しい男が愛される」話だったのでよかったです。案外まともに優しい男が報われ、愛される話って少ないんですよね……。女性向けだと特に。
妻を殺さないために家を出てひとりで生きていこうとし、三千世と出会ってからは身寄りのない者同士暮らしていこうとした、その過程に癒されました。
閉じ込められて暮らしたため、感情が少なかった三千世が真一の優しさに触れ、少しずつ人間らしくなっていく姿も素晴らしかったです。
最近こういういい人同士のカップルを求めていたので浄化されました。
登場人物の優しさとは裏腹に、結末は切ないものです。しかし、登場人物全員が、「こう生きたい」という人生をまっとうした結果でもあったのでさわやかな気持ちもありました。
真一と三千世、ふたりは出会って本当に幸せだったのだろうし、その結末としてこの選択をしたのであれば読者としても文句は言えないな、と。
タイトルの「心中」は「心の中」と「一緒に死ぬこと」のダブルミーニングでしょうか。結末を知ってからだとしみじみ心に響くタイトルでした。