あらすじ・概要
傷つき悩む人々の前に現れる、熊と鮭が営む甘味処。その店で甘いものを食べると、少し心が楽になる。マフィン、梅酒ゼリー、パウンドケーキなど、さまざまなお菓子と人生の苦楽が込められた連作短編。
ひねくれものが読んでも面白かった
ひねくれものなのであまりこの手の「ほっこり癒される」話は読まないのですが、手に取ってみるとなかなかどうして面白かったです。
悩みを抱えた人たちが甘味処を訪れる→甘いものを食べる→少し前向きになる、と基本のストーリーはよくあるものなのですが、人々が抱える「悩み」にリアリティがありました。
仕事で「できない人」扱いされて悩む人、病気により飼えなくなった猫を里親に出した男性、重い病を抱えた友人に会いに行く女性ふたり。優しい絵柄で描かれる、人生の悲しみや後悔に心を動かされて少し泣いてしまいました。
描写がテンプレ的ではなく、丁寧なのがよかったです。
おまけページとして描かれている別視点からの「悩みを持つ人々」も面白かったです。抱えている悩みに気づき、寄り添いたいと思っている人たちも確かにいます。そして、視点を変えれば自分自身の気づかない姿があるということも。
人生は楽しいことばかりではないですが、もう少し頑張ってみようかなと思える作品でした。