あらすじ・概要
日々の仕事で疲れ果てているシイノは、友人、マリコの自殺を知る。マリコは幼いころから虐待を受けており、情緒が不安定だった。今からでも彼女にできることはないか……。そう思ったシイノは、マリコの家から彼女の遺骨を奪い去り、当てのない旅に出る。
マリコが悪くないように椎名も責任を負う必要はない
期待して見に行ったのにかなり肩透かしでした。「心を病んで自殺した女性とその友人に寄り添う話」としてはかなりモラルがガバガバだし、女性同士の不健全な友情の話としても中途半端でした。
そもそも私がマリコほど露骨ではないですが、「女友達」にズブズブに依存してくる女性に悩まされてきたので、こういう関係を「エモい」とか「ロマンチック」とか思えないんですよね……。
もちろん依存体質の人にもそれなりに事情があるのはわかっているんですが、その「事情」に対して赤の他人が責任を取る必要は何らないと思います。マリコに対して責任を取るべきは加害者や社会、福祉であって、主人公のシイノではない。
シイノが後悔すべきことがあるとしたら、それはマリコの依存を許し、他の人の助けを借りなかったことであって、「自分が何かできたのでは」という部分ではありません。
せめて「マリコは悪くない」と言うように、「マリコを救えなかった椎名も悪くない」と言ってほしかったところ。心を病んだ人はひとりでは救えないんですよ。医者や福祉関連の人の助けがあって初めてなんとか安定させられるかな、というくらいです。
その点を踏まえて、あえて「正しくない関係」を描いているならいいんですが、そう受け取るにしてもマリコとシイノのぶっ壊れっぷりが足りず、いい子ちゃんの内容になってしまっていたので物足りなさを感じました。
主人公のシイノもマリコも、何だかんだ正気の側に見えてしまうんですよね。これは脚本のせいか俳優の演技のせいかはわからないんですが。
正しい関係がわからないほど彼女らは「壊れているのだ」と納得するほどには、作品の狂気が足りなかったです。
原作もあるので、すべてが映画制作側の責任だとは思いませんが、消化不良の話でした。