あらすじ・概要
日本で育った台湾人である著者は、長じるにつれ「台湾人なのに中国語を話せない自分」に悩むようになる。高校で中国語を学び、大学でも引き続き中国語を選択するが、その過程でも違和感がなくならなかった。「自分は自分」として著者が自分を受容することができたきっかけとは……。
社会がグローバル化する中で参考になる本
社会がグローバル化し、移民や難民で他国に移住する人々が増えれば、複数の民族的・言語的ルーツを持つ人は増えるでしょう。そういう社会を迎えるにあたって、参考になる話でした。
ルーツとしては台湾人であるのに、ネイティブほど中国語が上手くならないという葛藤を抱え、また日本で生きるとしても、「自分は日本人ではない」という壁にぶち当たります。そしてその葛藤には中国と台湾の歴史と力関係が影響しています。
この本には自分の民族的ルーツに悩んだことのない人たちの心ない言葉が出て来ます。その発言にぞっとしつつ、自分がそこにいたら何が言えるだろうかと考えてしまうところもあります。「そういうことを言わないで」と言うのも難しいですよね。
著者は就職から逃げるように大学院に進学し、そこで出会った教師に出会ったことで、価値観を少しずつ変えられるようになっていきます。
「日本人らしく」するのでも「中国人らしく」するのでもなく、ふたつの文化を抱えた、今のままの自分だからこそできることがあるのだ、と自分を捉え直します。
著者は子どものころから書くことが好きであり、日記を描いたりwebで小説を発表したりしていました。「書くこと」が著者を支え、またこうしてふたつの文化を生きる人々を鼓舞する本を出しているのはとても感動的でした。
著者が悩みを発信することで、変わることもあると思います。これからも書き続けてほしいです。