あらすじ・概要
とある学校に通う、ちょっと変わった少年少女。美術部の男子、本好きの女子、根暗で陰気なはみ出し者など、ある日突然彼らの日々は交差し、不思議な縁が生まれる。さまざまな関係性を描いた連作短編集。
出会いによって少し価値観が変わる瞬間が心地いい
キャラ設定自体はくせが強く、「こんな少年少女いないだろ」というところもありますが、彼らの交流の質感自体にはリアリティがあります。
恋愛的な意味にしろそうでないにしろ、今まで全然注目してこなかった人間の意外な一面を見て、「こいついいな」と思う瞬間があります。その瞬間の切り取り方がすごくうまいです。
出会いによって狭くなっていた価値観が広がる瞬間、またその瞬間の心地よさを追体験するような連作短編でした。
個人的に好きな回は本好き少女と看板の一文字一文字を繋げてSNSに投稿するのが趣味の少年との出会い、「友達になってくれませんか」です。ネタ自体はトンチキだけれど、ロマンチックさもあって、そのちぐはぐさが面白かったです。
パシリの少年が勇気を出す話「走れ山田!」も好き。
オチもくせが強いためどういう気持ちで読み終えればいいのか……と悩む話もありましたが、それも含めて個性的で面白かったですね。
独特の世界観・人間観を持っている作品だと思います。