あらすじ・概要
東京の高すぎる家賃に嫌気がさし、和歌山の奥地の家賃5000円の家に引っ越したグレゴリ青山とその夫。家庭菜園を作ったり、四季の花を満喫したりしながらも、不便さや虫の被害など田舎特有の困りごとにも悩まされる。いいことも悪いこともあった4年間の田舎暮らしの決着とは……。
いいところも悪いところも素直に書いているリアリティのある作品
「田舎は素晴らしい」という話でも、「田舎は嫌なところだ」でもなく、いいところも悪いところも素直に描いていて、それゆえにリアリティのある作品でした。
田舎暮らしエッセイっていいところばかり描く印象が強いので、田舎暮らしを楽しみつつも「ここが嫌」とはっきり言ってくれるのはすっきりします。
気取ったところのない、ストレートな物言いに笑い、慰められます。
田舎に来て花の美しさに気づき、季節を意識するようになった著者の喜びに親近感を覚えました。きらきらした絵柄ではない作風でこれが語られるのもいい。
一念発起して肥を撒くくだりも面白くて笑ってしまいました。
4年間田舎で暮らした著者夫妻ですが、放し飼いにしていた猫が毒物を飲んで死んでしまったこと、収入が減ったことをきっかけに、田舎を去ることになります。
害獣駆除の毒餌や農薬を飲んで飼い猫、飼い犬が死んでしまうことはときどきあることみたいです。
ハッピーな終わり方ではなかったですが、「ここは自分が一生いるべき場所ではないのだ」と気づいてしまった著者の気持ちに触れて苦しくなりました。
わかりやすいメッセージやテーマがあるわけではないんですが、その分人生の1ページを見せてもらったようで面白かったです。