ブックワームのひとりごと

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2022年下半期に映画館で見た映画まとめ10本

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もう2022年も終わりなので、下半期に映画館で見た映画の感想をまとめました。

会社の福利厚生が変わって「申請すれば800円で映画が見られるクーポンがもらえる」制度になったのでじゃんじゃん申請していました。ありがたい。その代わりクーポンが使える大きめの映画館を中心に見るようになったので下半期はミニシアター系の映画を全然見てません。

見るものも自分の事情で変わるものだなあ、と思いつつ。以下、感想です。

 

 

大人になった五人の女性は地元の県にキャンプ場を作る『映画 ゆるキャン△』

大人になり、ばらばらの場所で生活している野外活動サークルの面々。山梨の町おこしに携わる大垣千明と出版社に勤める志摩リンが再会したことから、使われていない施設の土地を使って、キャンプ場を作ることに。しかしその過程は前途多難で……。リンはキャンプ場計画のリーダーとして奔走する。

卒業とともにばらばらになった女の子たちが、青春を過ごした場所に戻ってきて、その土地のために何かを成し遂げる。家族や地元の人の協力を得ながらも、みんなで仲良く作業をします。

実際のところそうそう上手くいかないのでしょうが、『ゆるキャン△』はおとぎ話だから多少ご都合主義でもいいでしょう。

また、基本はハッピーで前向きな内容ながらも、過疎化が進み小学校の統廃合が為されていることや、作品のマスコット的存在の犬ちくわが老犬となり残り少ない生を生きている描写があり、作品に適度なほろ苦さを出しています。

町おこしをテーマにしたアニメを作ろう!という方向性は面白かったです。

honkuimusi.hatenablog.com

 

赤ん坊を売るブローカーと赤ん坊の母親との間に奇妙な絆が生まれる『ベイビー・ブローカー』

赤ちゃんポストに捨てられた赤ん坊を養子がほしい夫婦に売っている、ブローカーの男ふたり。ひとりの男の赤ん坊を売ろうとしたところ、その母親に人身売買の旅へついて来られることとなる。三人が赤ん坊を世話しながら旅をするうちに、奇妙な絆が生まれ始める。

シビアなところはシビアで、売春の問題、望まぬ妊娠の問題、親に捨てられた子どもの問題など、胸が重くなるシーンも多かったです。

しかしそんな人生の苦難や大きな過ちの中でも、ひとりの赤ん坊を中心に、「誰かを愛したい、心の支えを得たい」という感情を登場人物たちが持っていくのがよかったです。

人間、愛されたいのと同じくらい「愛したい」という願望もあるものだよね、と思いました。

この出会いによって苦しみがきれいさっぱりなくなるわけではないのですが、主人公の大人三人にとって、この出会いは確かに救いだったのでしょう。

honkuimusi.hatenablog.com

 

「映え」を意識しすぎて思想的にはガバガバ『長崎の新聞配達』

戦後の日本・長崎にやってきて、とある被爆した郵便局員谷口と出会い、その経験を本にしたためたピーター・タウンゼント。タウンゼントの娘イザベル・タウンゼントは、谷口の死後長崎を訪れ、父親が記録した谷口の被爆体験をなぞっていく。

全体的に意味のない「映え」や「ノスタルジー」的な描写が多く、原爆の被害を受けた人間の切実さ、怒りがまったく伝わってこなかったです。

「美しい日常を壊した戦争という惨禍」のつもりなのかもしれませんが、そういう文脈としてもいまいちでした。

私は被爆者として活動し、非核化を訴えていた谷口さんのことをよく知らなかったので、情報としては新しく新鮮でした。しかしそれを主張したのは谷口さん自身であり、それを書きとったのはピーター・タウンゼントさんで、映画の制作陣ではないんですよね。

どうも過去の人間の努力に乗っかって、キラキラした映画を作っただけに思えます。

honkuimusi.hatenablog.com

 

完全に間違った日本を舞台にした懐かしい感じのトンチキコメディ『ブレット・トレイン』

いつも不運に巻き込まれるてんとう虫(レディバグ)という運び屋は、新幹線での仕事を引き受け列車に乗り込む。しかしその新幹線ではそれぞれの思惑を持つ殺し屋たちが同乗していた。てんとう虫が依頼されたアタッシュケースを奪ったことから、列車の中で次々にトラブルが起こる。

ストーリーは登場人物が何気なくした行動が、ドミノが倒れるように後々の展開に効いてくる、の繰り返しです。複数の殺し屋の思惑が重なり、いったいどうなるの、の連続。退屈しないストーリーで楽しかったです。

キャラクターの設定も個性的で、特にレモンとみかんのバディが面白かったです。しょっちゅうけんかしている殺し屋コンビ、でも終盤になってくると彼らの信頼や関係性が生きてきて、わくわくしました。

ただ、日本人作家の作品が原作であり、日本人俳優が重要な役割を果たしている作品なのに、公式のプロモーションがアジア人を排除しているようなものが多かったのが残念でした。文化やネタを借りておいてそれはなしじゃない?

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メッセージ性のある作品としても、正しくない作品としても中途半端『マイ・ブロークン・マリコ』

日々の仕事で疲れ果てているシイノは、友人、マリコの自殺を知る。マリコは幼いころから虐待を受けており、情緒が不安定だった。今からでも彼女にできることはないか……。そう思ったシイノは、マリコの家から彼女の遺骨を奪い去り、当てのない旅に出る。

期待して見に行ったのにかなり肩透かしでした。「心を病んで自殺した女性とその友人に寄り添う話」としてはかなりモラルがガバガバだし、女性同士の不健全な友情の話としても中途半端でした。

そもそも私がマリコほど露骨ではないですが、「女友達」にズブズブに依存してくる女性に悩まされてきたので、こういう関係を「エモい」とか「ロマンチック」とか思えないんですよね……。

もちろん依存体質の人にもそれなりに事情があるのはわかっているんですが、その「事情」に対して赤の他人が責任を取る必要は何らないと思います。マリコに対して責任を取るべきは加害者や社会、福祉であって、主人公のシイノではない。

シイノが後悔すべきことがあるとしたら、それはマリコの依存を許し、他の人の助けを借りなかったことであって、「自分が何かできたのでは」という部分ではありません。

ほんとこういう依存を美化するような作品苦手なんだよねえ~!!!

honkuimusi.hatenablog.com

 

 

ケモキャラたちのハチャメチャ犯罪行為と人外ブロマンス『バッドガイズ』

強盗や盗難を繰り返してきたウルフたち「バッドガイズ」。しかしテレビニュースで自分たちをばかにされたことに腹を立て、金のイルカを盗み出す計画を企てる。しかし計画は失敗し、ウルフたちはマーマレード教授の元で善人になる訓練を行う。善人の振りをしていようと思うウルフだったが……。

ストーリー的にはウルフとスネークのケンカ友達関係が印象深かったです。善行に興味

を持ち、誰かに怖がられない生活をしてみたいと思い始めるウルフと、そんなウルフを見て裏切られたと感じるスネーク。

新しい人生への興味と、友人への愛着の間で揺れるウルフ。善人になっていくウルフを見て疎外感を抱くスネーク。彼らを和解させるシーンはちょっと強引で笑ってしまいましたが、エンタメ作品なんだからこのくらいトンチキにやってもいいかもしれません。

一方で「悪人が回心して善人になる」話としては、ストーリーの深みや心理描写が足りなかったです。その部分に興味があって見るならがっかりするかも。

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「自分のため」だけで生きていけないし、「他人のため」だけでも生きていけない『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』

多忙な広告会社に勤める吉川は、同僚から「ここ一週間をタイムループしている」と告げられる。半信半疑だったが、数々の証拠を見せつけられて信じることに。タイムループを乗り越えるには、どうやら部長がカギになっているらしい。吉川たちは部長にタイムループが起こっていることを知らせようとするが……。

シンプルに脚本が面白いです。タイムループネタはかなりやりつくされたベタな設定ですが、舞台を「修羅場状態の広告会社」にしたところが個性的でした。また、何度もタイムループするうちにクライアントの無茶振りにすぐ対応できるようになったり、ループする時間のうちにスキルアップしてしまうところも笑いました。

とにかく次々に話が展開していくので、中だるみするシーンがまったくありません。展開が早いまま伏線を敷きまたしっかり回収していくので、爽快感もあります。

また、「自分のために生きる」というメッセージがトレンドになる昨今で、あえて「他人のために行動するのもいいんじゃない?」という展開になっていくのもよかったです。

それでいて、「他人のために行動すること」が絶対善として描かれるのではなく、自分のために行動することが状況を打破する場面もあります。要はバランスの問題で、「自分のため」だけでも「他人のため」だけでも人生上手くいかないということなのだと思います。

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物理的には男が救われ、精神的にはヒロインが救われる、震災後を捉え直す作品『すずめの戸締まり』

高校生のすずめは、ある日不思議な男性・草太に出会う、彼が不思議な扉を閉めるのを目撃したすずめは、彼が「閉じ師」として各地の地震を防いでいることを知る。しかし草太は謎の猫にいすの姿に変えられてしまい、すずめも彼を追って猫探しの旅に出ることになる。

恋愛ものといっても描写自体はあっさりしており、何より恋愛相手である草太がいすの姿になってしまうのでいやらしさはあまりありません。オチもさわやかでした。

そして男を救うけなげなヒロインの話であると同時に、東日本大震災の後の日本で生きてきたすずめの人生を振り返り、もう一度歩き出そうとする話でもあります。

震災によって母を失い、生活を失ったすずめは、地震を鎮める旅をすることで、自らの傷を癒していきます。そして過去の自分と向き合ったとき、すずめが語りかけた言葉は本当に美しかったです。

また、行方不明になったすずめを追いかけてきたおばの存在も印象的でした。すずめを思い、大切にしながらも、彼女が中盤で吐露した思いには呑まれるような凄みがありました。彼女もまた、震災に人生を狂わされた人間のひとりだったのでしょう。

この作品で救われたのは物理的には草太だけれど、精神的にはすずめなんですよね。エンタメ的な恋愛要素と、スピリチュアルな描写を通して災害からの立ち直りを描く脚本のうまさが光っていました。

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統合失調症になった猫画家が妻の願いとともに苦しみの中を歩む『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』

画家として、亡くなった父に代わり妹たちを養うルイス・ウェイン。妹たちの家庭教師、エミリーと恋に落ちた彼は、身分違いの結婚をしてしばらく幸せに暮らす。しかしエミリーが末期の乳がんだとわかる。妻を看取ったあと、ルイスは猫を描く画家として成功するが、金銭感覚のないルイスは借金を重ねてしまう。

予想以上に統合失調症についてがっつり描写してあったので驚きました。遺伝的な因子と、妻や愛猫を失った悲しみ、家族を養わなければならないという重責から統合失調症を発症し、妄想や幻覚の世界に囚われていくルイスの姿はおかしくも悲しいものでした。

ルイスが客席の前で妄想を演説するシーンはものすごい迫力がありました。ベネディクト・カンバーバッチの面目躍如。

ただ、この作品がラブロマンスではないのかというとそうではなく、最後まで見るとやっぱり愛の話ではあるなと思いました。

短い間だったとしてもルイスの不器用な性格や作風を理解し、共感を示したエミリーがいたからこそ、ルイスは必死で生き、自分なりに生活する手段として猫を描き続けます。

「あなたがいたから問題が解決したわけではないけれど、あなたがいたからここまで走り続けられた」という話なのかなあ、と見終わって思いました。

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特『刀剣乱舞―花丸―』 月&花

見てたんだけど好きなキャラへの巨大感情が大きすぎてここでは感想を書きにくい作品です。

とりあえず南海太郎朝尊が活躍してくれてよかったです。

 

 

まとめてみると見たのは海外映画でも日本の監督だったり、日本をテーマにした作品だったり、映画鑑賞では日本文化づいていた半年でした。

邦画の抱える諸問題は認識しつつ邦画自体は好き(やっぱり日本が舞台じゃないと描けないものっていっぱいあるじゃ~ん?)なので日本の映画監督には頑張ってほしいと思ってます。