ブックワームのひとりごと

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体は男だが性辞任が女の王女様が男でも女でもない妖精に恋をする―黒井あがさ『ロイヤル・ガーデンの友人』

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ロイヤル・ガーデンの友人(上)

 

あらすじ・概要

男性の身体を持つが性自認は女の王女、マイルス。公務のときは男性の格好で、プライベートは女装して過ごしている。そんなマイルスの友人は、男か女かわからない白の妖精、オウ。マイルスはオウに恋心を抱くが、性別のないオウはその感情に応えることができず……。

 

多様性の話ではあるが、理想を押し付ける嫌らしさがない

体は男だが性自認は女のマイルスが、男でも女でもないオウに恋をします。オウは白に宿る妖精なので、マイルスに「(王族、ひいては城の存続のため)子どもを作ってほしい」と願ってしまいます。

お互い「好き」な感情はあるのに、求めるものが違います。意地悪なわけでも、嫉妬しているわけでもないのにとことんすれ違ってしまうふたりにはらはらしました。

最終的にはふたりが一緒にいられる未来があってよかったと思える終わり方でした。

 

このシリーズはマイルスだけではなく、マイルスの上の姉妹たちのエピソードもたくさん出てきます。恋に生きる人、仕事に生きる人、それぞれの女性の幸せがあり、そこに優劣がつけられていないのがよかったです。

多様性をテーマにした作品ではあるんですが、「これが理想の多様性なんだ」という押しつけがましさがなくて、安心して読めました。

優しい人たちに恵まれていても、自分がやりたいことがあっても、違う価値観の人と対峙しなければならない瞬間はあります。その瞬間どうするかというのが、キャラクターたちの行動に現れていて好きでした