あらすじ・概要
ベンチに寝そべられなくする、開いている土地にホームレスが段ボールハウスを作れなくする、若者がたまらないようオブジェを置くなど、「邪魔者」を排除する排除アート。それらはどのように設置され、社会にどのような影響を与えているのか。町にある排除アートから、現代の不寛容を見る本。
芸術家から怒りの声が出ている
世の中のベンチがだんだんそういう形になってきているのは知っていましたが、「排除アート」という言葉や概念に対して、多くの芸術家たちが怒りを覚えていることに驚きました。でも考えてみると、当然かもしれません。
芸術家の人たちの中には、芸術を通して弱い人の存在を取り上げたいという人もいるだろうし、そういう人にとって「排除のオブジェ」にアートの名がつくのは耐えられないことでしょう。
私も大阪という土地柄、ホームレスの人をよく見かけているんですけれど、彼らはあるときふっといなくなるときがあります。ホームレスの人が特別好きというわけではないですが、ちょっと心配になります。死んだのではなく、福祉施設でゆっくり過ごしていてくれるといいんですが。
また別の話ですが、私の友人が別の友人と出かけたとき、その別の友人が体調を崩して、ベンチに寝かせて介抱していたら「ベンチで寝るなんて」と通りすがりの人に嫌味を言われたそうです。「ベンチで寝てはいけない」という価値観が重く存在しすぎているのではないでしょうか。
具合が悪くなったらベンチで寝そべるのは普通のこと、と思っていてほしいところです。