ブックワームのひとりごと

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人類が衰退した世界でのほのぼのブラックSF―田中ロミオ『人類は衰退しました』

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人類は衰退しました1 (ガガガ文庫)

 

あらすじ・概要

人類最後の最高学府を卒業し、故郷に戻ってきた「わたし」。そこで調停官という仕事に就くが、実質お飾りの役職らしい。調停官の「わたし」は今地球を支配する新人類、「妖精さん」にコンタクトを取り、交流していくが……。

 

わたしちゃんもこのころは大人しいなあ

既読の作品。KindleUnlimitedに合本版が登場したのでこれを機会に読み返していました。

作品のオチを知ってから読み返すとまだこのころは平和だったなあと思います。「わたし」もまだまだコミュニケーションが苦手なひねくれ者です。

そんな初々しい「わたし」が現人類、妖精さんたちと触れ合い、高度な建築物や疑似生命を生み出すその技術力にビビり、めちゃくちゃになってしまったペーパークラフト世界を呆然と見つめるのは面白かったです。

「わたし」の反応も根暗な人見知りではあるものの、人間らしくて共感できるんですよね。楽な仕事をしたい、責任は取りたくない、でもある程度のモラルはある、というキャラクター造形が好きです。

自然や廃墟となった文明が描かれる、一見牧歌的な作品でありながら、現実世界のパロディや皮肉であったり、生命倫理すれすれのギャグだったりが描かれていて飽きないですね。

 

第1巻は「わたし」、「おじいさん」、「妖精さん」と登場人物の自己紹介も兼ねているので味付けは薄めですが、これからどんどん濃くなっていくので一巻が楽しめた人は続きも読んでほしいです。