ブックワームのひとりごと

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トンチキとリアルが交差する京都ファンタジー―森見登見彦『夜は短し歩けよ乙女』

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夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

 

あらすじ・概要

とある乙女に一目ぼれした「私」。「私」は乙女の視界に入ろうと彼女を追いかける。一方乙女も、夜を歩くうちに京都で起こる不思議なできごとに巻き込まれ、その中で大活躍する。

 

小説でないと生まれえないシーンがある

基本的にリアリティのないトンチキファンタジーなのですが、ところどころに京都での大学生生活の丁寧な描写があり、幻想と現実を行き来する話でした。

あり得ない展開を何度も重ねながら、古本市に並んでいる本のタイトルの「らしさ」だったり、大学の学園祭の「ありそう」な展示だったり、ふとしたときに現実と繋がる感覚を持ってしまいます。そういう瞬間はどきっとしました。

絶対に現実に起こりえない恋物語が、大団円を迎えたときはすっきりしました。

 

アニメ映画にもコミカライズにもなり、それを先に見ましたが、原作を読むとメディアミックスでは削ぎ落とされてしまう部分が多かったです。

コミカルな長いモノローグを展開したり、キャラクターに長台詞を言わせて芝居がかった展開にしたりは小説以外では難しいでしょう。

 

ただセクハラ描写については今見るときついなと思います。痴漢でつらい思いをした人にはおすすめしませんね。

やっぱり時代の変遷と言うものはありますね。