あらすじ・概要
社会問題になっている介護のこと、そして思いつめた結果介護していた相手を殺害してしまう人がいる。毎日新聞大阪社会部取材班は、介護殺人をしてしまった人々に取材を申し込んだ。重たい口を開いた彼らが語るのは、壮絶な介護の実態だった。加害者の立場から介護殺人防止を考える本。
加害者はもちろん自分が介護した相手のことについて話したくないので、何度も取材を申し込む取材班に対して冷たい反応をする人も少なくありません。それでも勇気を出して介護殺人について語ってくれた人たちがいてくれてよかったと思います。
印象的だったのは、介護殺人をしてしまった人の多くは、真面目に介護を行い介護する相手を深く愛していたことです。一時的に介護サービスを使ってみても、そのサービスの雑さが気になり、結果的にひとりで介護をすることを決断する人も何人かいました。
「愛しているから、完璧に介護をこなさなければ」という思いが、いつしか殺意に変わってしまう恐ろしさを感じました。
また、介護殺人をしてしまう人は、圧倒的に男性介護者が多いです。男性介護者は、女性介護者の集まりには入りにくいので、男性介護者向けのコミュニティを作ることの重要性はなるほどと感じました。
取材したのが毎日新聞の大阪取材班ということで、登場する人々は大阪を中心に関西在住の人がほとんどです。私に土地勘があるからこそ、「ああここはこういう町だった」というのがリアルに感じられて、余計に切なかったです。
介護殺人が発生して、かわいそうだから減刑する。それだけでは介護殺人を起こしてしまった反省を生かすことはできません。何ができるのか、きちんと考えなければならない問題だと思いました。