あらすじ・概要
生物学の道を諦め、美学を志した著者は、障害を持つ人、特に視覚障害を持つ人の世界の認識に興味を抱く。「見える」ことが前提の社会で、「見えない」人たちはどのようにして周りの状況をとらえているのか。
「違いを面白がる」という可能性
私の知識が福祉寄りのため、著者の意見に賛成できない部分もあります。例えば失明をきっかけに引きこもりになってしまう人も多いため、著者の研究に協力できる視覚障害者は、精神的に元気な人が多いでしょう。障害を負うことはつらいことなので、精神的に元気な人に合わせすぎるのもどうかと思いますし。
ただ、違いを面白がることで、「助ける・助けられる」という関係を打ち破ることができれば、それはいいことなのかもしれません。
障害のある人を見るとつい「助けなければ」と思ってしまいますが、実はそういう考えなしでも障害者と関わっていい、というのは一理あるかもしれません。
著者が「障がい者」という表記に否定的な点は、私もすごくわかるので好きでした。私も障害者手帳を持っていますが、表記にこだわるより、当事者の「バリア」を減らす政策を打ってほしいです。
それにどんな言葉を作ろうと、その言葉を差別的な文脈で使おうとする、意地悪な人はいるものです。まずその意地悪な人を批判していただきたいです。