ブックワームのひとりごと

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美学の視点から見る視覚障害の人の世界のとらえ方―伊藤亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

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目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)

 

あらすじ・概要

生物学の道を諦め、美学を志した著者は、障害を持つ人、特に視覚障害を持つ人の世界の認識に興味を抱く。「見える」ことが前提の社会で、「見えない」人たちはどのようにして周りの状況をとらえているのか。

 

「違いを面白がる」という可能性

私の知識が福祉寄りのため、著者の意見に賛成できない部分もあります。例えば失明をきっかけに引きこもりになってしまう人も多いため、著者の研究に協力できる視覚障害者は、精神的に元気な人が多いでしょう。障害を負うことはつらいことなので、精神的に元気な人に合わせすぎるのもどうかと思いますし。

ただ、違いを面白がることで、「助ける・助けられる」という関係を打ち破ることができれば、それはいいことなのかもしれません。

障害のある人を見るとつい「助けなければ」と思ってしまいますが、実はそういう考えなしでも障害者と関わっていい、というのは一理あるかもしれません。

 

著者が「障がい者」という表記に否定的な点は、私もすごくわかるので好きでした。私も障害者手帳を持っていますが、表記にこだわるより、当事者の「バリア」を減らす政策を打ってほしいです。

それにどんな言葉を作ろうと、その言葉を差別的な文脈で使おうとする、意地悪な人はいるものです。まずその意地悪な人を批判していただきたいです。