あらすじ・概要
冴えないおじさん、犬屋敷は、ガンで余命宣告をされ、自分の人生を省みていた。そんなとき突然機械の体を手に入れ、自分が自分ではない心境に陥る。犬屋敷は人を助けると自分が自分でいられることに気づき、強大な力を使って人を救うようになる。
自分が自分であるためにいいことをしたいのはわかる気がする
この漫画のようにスケールの大きい話ではなくても、「自分が自分であることのためにいいことをしたい」という価値観はわかる気がします。
主人公、犬屋敷は、機械の体を持ったことで自分の同一性に不安を抱き、「いいことをすると、自分が自分でいられる気がするから」という理由で人を助けます。
心がむしゃくしゃしたとき、赤十字に寄付をしたり、人に親切にすることによって心が落ちついたことがあります。だから犬屋敷の行動には共感を覚えました。
しかしもうひとりの機械化人間、皓は能力を人を殺すことに使ってしまい、人々から追われる身となります。
本人の主観から見れば、彼は彼なりに「自分の同一性」に悩み、悩んだ結果殺人を犯してしまっています。
だからと言って彼の罪が許されるわけではないのですが、善も悪も、それを為す人の主観から見ればあまり変わりはないのかもしれない、と思いました。
その皮肉を感じてから見ると、一見感動的なラストもひねくれたもののように思ってしまいます。
そもそも犬屋敷がチートな力を手に入れ、ドラマチックに人を助けない場合も、この家族は犬屋敷のことを大切にしてくれたのでしょうか?
描写が淡々としているゆえに、キャラクターの感情や、作品の倫理観について考え込んでしまう作品でした。