あらすじ・概要
日本において、神道と仏教は混じり合っていった。これを神仏習合と言う。時の権力者において、神道と仏教はどういうもので、いかにして神と仏は同一視されるようになったのか。朝廷や貴族社会、武士の社会と権力の移り変わりとともに、日本人の宗教観の変遷を追う。
権力に利用されながらも「ひっくり返す」ことを怖れられていた宗教
日本において神道と仏教は混じりあっていきましたが、かといって完全に同化したわけではありませんでした。その微妙な距離感がわかる本だと思います。
面白いのは時の権力は宗教を利用していましたが、同時に民衆の新しい信仰も恐れていたと言うことです。宗教には人を団結させる力がありますが、それは支配・被支配の関係を揺るがすものにもなりえるんですね。
確かにひとりひとりの価値観は弾圧できても、多くの人が同じ価値観を持つと世の中は揺らぎます。
神仏集合において、日本の神が仏教に帰依したり、仏教の仏と日本の神が同一視されたり、理屈で考えるとめちゃくちゃだろという展開も多いです。
しかし宗教は理屈だけで語れるものではありません。自分たちを助けてくれるなら、都合のいい救いを提供してくれるなら、それでよかったのかもしれません。
実際に、密教などの呪術的な行為を提供しないと仏教も広まっていきませんでした。
呆れると同時に、人間ってそういうものかもしれない、という諦めも感じます。理屈や正論が、人を幸せにするとは限らないんですよね。
ただ一部、著者の専門ではないだろうにそれは言いすぎでは? という部分もありました。その部分は他の本と読み比べた方がいいでしょう。