ブックワームのひとりごと

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【京橋のキャバレーで昭和と平成を舞った女】高殿円『グランドシャトー』

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グランドシャトー (文春文庫)

 

あらすじ・概要

義父と結婚させられそうになって逃げだしてきたルーは、京橋のキャバレーグランドシャトーにたどり着く。ルーはそこのホステスとして働くことになった。キャバレーのナンバーワン、真珠はどこか不思議な魅力を持つ女性だった。ルーは寮で真珠と同居することになる。

 

美しいがどこか危うい女と女の友情

恋愛ではなく、主人公ルーとグランドシャトーのナンバーワン、真珠の家族愛とも友情とも取れない関係を軸に話が進んでいきます。

ルーが真珠に母親を投影する姿は、一見微笑ましく見えても危うさが伴います。ルーが実質的に家族を失い、孤独になってしまってからはその危うさが加速します。

寮でチキンラーメンを食べ、自炊をし、ほのぼのとした関係を結ぶ一方で、ルーは真珠のために傾いたグランドシャトーを立て直そうと奔走します。不景気を盾に若い女の子を雇ったり、自ら露出度の高い過激なファッションをしたり、倫理的には正しいとは言えない行動も取ります。

しかしそれだけルーが真珠という女性に執着しているという証でもあります。

 

キャバレーというもののシステムを知らなかったので、その煌びやかでどこか影のある描写も印象的でした。

戦時中は軍事工場があるため焼夷弾に焼かれ、復興し変わっていく京橋という町を描いているのも面白かったです。

大阪のとある町を舞台に、昭和と平成を舞い踊りながら駆け抜けた女性の物語でした。

 

しかし、これだけモデルとなった店が明らかだと、巻末の「この作品はフィクションです。実在の団体や人物には関係ありません」という言葉が白々しく感じてしまいますね。事実だと思っているわけではないですが、「フィクションです」と主張するのであれば、全く違う店名にした方がよかったのでは……。

あとリアルに寄りすぎると、ルーが不景気をきっかけに若い女の子を雇ったり、年金暮らしをしている男性からお金をせしめたりするのが途端に笑えない内容になってしまいます。エンタメだからといってそこを流すべきではないですよね。

 

 

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