あらすじ・概要
祖国カンバルから逃れ養父ジグロと旅をしているバルサ。バルサはあるときタンダの村に滞在し、死者の幽霊騒ぎを聞く。その死者は、タンダがなついていたおじさんだった。
老いの哀しみと人生を振り返る瞬間と
あとがきによると、短編集全体のテーマが「老い」であるらしいです。どれも哀愁漂う、切ない話でした。
「浮き籾」はバルサがタンダの村に滞在する話。
タンダとバルサが日常生活を送っているだけでしみじみとしてしまいます。過酷な旅をしてきたバルサが「普通の生活」に戸惑い、いろいろ考えてしまって他人の親切をうまく受けとることができないのが印象的でした。
「だめ人間だが一部の子どもには人気のあるおじさん」の像もよかったです。
「賭事師<ラフラ>」は賭博師の物語です。カタギの世界ではない、奪うか奪われるかの場所で生き延びていくひりついた世界観に恐ろしさも覚えました。バルサが賭け事で借金を背負った経験があるのは少し笑ってしまいましたが、子どもの頃の積み重ねがあるから今のバルサがあるのでしょうね。
本編のように大冒険をしませんし、国家の命運をかけて戦うわけではありません。しかし守り人シリーズには特別ではない人たちの物語がちゃんとあるということが素敵でした。
善人でも聖人でもない人たちを、バルサの目を通して眺めていると、世の中の無常やそれでも残る人間のけなげさを感じてしまいました。