ディズニープラスのプリペイドカードを買って3ヶ月ディズニー映画を見続けていました。その経験をまとめ記事にしていこうと思います。
今回はディズニーのマイナー映画おすすめ10選です。「マイナー」の定義は人によって違うでしょうが、ここでは「ディズニーファン以外はよく知らなさそうな作品」という定義でまとめています。
実写
『クルエラ』
少女、エステラは母親を亡くし、泥棒の少年ふたりと暮らしてきた。ある日エステラはあこがれだったファッションデザイナーの元で働けるようになったが、そこは最悪の職場だった。そして、エステラが母の死の真実を知ってしまったことから歯車が狂い始める。
倫理のない女が倫理のない女と戦う話であり、どこかビターでままならない気持ちになる話でした。
クルエラが「実はいい人」として扱われない代わりに、悪役がクルエラよりよほど倫理がないキャラクターとして描かれています。復讐譚だけど悪い女と悪い女が戦っているからエンタメとして楽しめるんですよね。
そしてクルエラは悪い女なんだ、おかしいんだ、と描かれながらも、クルエラの本名「エステラ」の持つ属性がすり減っていくところが切なかったです。
よい人と悪い人の境界線なんてあやふやなのかもしれない。そう思う作品でした。
3Dアニメ
『バズ・ライトイヤー』
故郷の星への期間を目指す人々のため、ハイパー航法の試験飛行を行うスペース・レンジャーとして宇宙に飛び出すバズ・ライトイヤーは、ウラシマ効果によって星で暮らす人々との時間がずれていく。ハイパー航法の実験が打ち切りになり、人々が故郷を目指さずこの星で生きていくことを決めたとき、バズは勝手にハイパー航法の試験を実行する。
冒頭からほのかな恋心を持っていた相手がパートナーを持ち、家族を築き、人生をやっていっているのに、バズは若いまま、ひたすらハイパー航法の試験を繰り返していきます。愛はありますが、業が深い描写でした。
実質的に時を超えたバズは好きだった人の孫と出会いますが、彼女とラブストーリーは展開しないところがいいですね。かつて好きだったあの人とは別の人で、あくまで面影がある人なんですよね。
わかりやすいヒーローであるバズが、「自分は何者かでなければならない」という感情に呪われていることに気づくところは、とても現代的でした。
『インサイド・ヘッド』
11歳の少女、ライリーの中にはいろいろな感情がある。その感情のひとつであるヨロコビは、事故でで頭の中の司令部から遠く飛ばされてしまう。一緒に飛ばされたカナシミと一緒に、ライリーを幸せにするために司令部に戻ろうとするが……。
根暗な人間としてはヨロコビの空元気がうっとおしく、押しつけがましく感じました。無意識にカナシミを見下しているところも。しかし、最初の段階で「これは、カナシミが再評価される話なのだろうなあ」とわかる内容でしたからいらついていても見られました。人は、心から「悲しい」という感情を引き受けないと前に進めないことがあります。常にポジティブであることにこだわり、悲しみから目をそらしていると、逆にストレスがたまります。
「頭の中」の世界を魅力的に描き、その上で悲しみも必要な感情であることを示すストーリーは面白かったです。
『私ときどきレッサーパンダ』
優等生のメイは、実はアイドルオタク。彼女はある日レッサーパンダになってしまう。それは一族の特異体質であり、儀式を行えばレッサーパンダは体から出ていくらしい。しかし、メイはアイドルグループのチケット代ほしさに、レッサーパンダの外見を利用して……。
主人公がアイドルオタクな作品です。キラキラしたオタクの上澄み層ではなく、限界になったり無理になったり号泣したりするオタクが、露悪的にも自虐的にもならずに描かれているのがよかったです。
メイは冴えない外見ですが、冴えない外見のまま、自分にできることを見つけて自信を持つところがよかったです。そして外見がさほど変わらなくても、自信や自己肯定感を身につけると態度や立ち振舞いが変わり、魅力的に見えます。ファッションや化粧より、その部分を描いてくれたのがうれしいです。
そしてその変化をもたらすのが、家族や教師ではなく、友達というのも好きです。守られるだけの子ども時代を抜けて、対等な立場で助け合う相手を見つけていくメイを応援したくなりました。
『ソウルフル・ワールド』
学校の音楽教師をしながら生計を立てているジャズピアニストのジョーは、ある日有名ミュージシャンとの共演のチャンスを得る。喜んだのもつかの間、ジョーは穴に落ちて半死半生の状態になり、魂だけの姿になってあの世に行くことを要求される。ジョーは何とか行き返るために生まれる前の魂である22番を利用しようとする。
主人公のジョーはピアニストとして成功することを夢見ています。しかし、その一方で学校の音楽教師としてピアノを教えることや、喫茶店で演奏をすることをどこか軽蔑しています。
しかし、作品の途中で夢を叶えたジョーは、子どもたちや一般の人たちに音楽を教えたことも、自分の人生の一部だと気づきます。
生まれる前の魂としてジョーと出会う22番が、自分のネガティブさに対して別の見方を得ていくのもよかったです。
彼or彼女は生まれたくないと、反出生主義じみたことを話します。しかしそれは22番が思慮深く、自分の内面について深く考えてしまう性格だからということが語られます。
「夢は叶う」というよくあるストーリーとは違う、ちょっと王道から外れたところが面白かったです。
『バグズ・ライフ』
アリの群れの中の発明家フリック。彼は荒くれもののバッタ一味に供える食物をなくしてしまった。その責任を取るために巣の外を出て、バッタと戦ってくれる助っ人を探す。やってきたのは売れないサーカス団の一味だった。サーカス団は興行と勘違いして来たと言い、アリたちの元を離れようとするが……。
虫の生態を反映したキャラクター作りが面白かったです。
目の模様があるチョウはそれで鳥を脅かしたり、「レディバグ」と呼ばれるてんとう虫は女性的に見られることを気にしていたり。
バッタが悪役なのは蝗害からの連想なのでしょうか。
働きアリにオスもいましたし、完全に現実と同じわけではないですが、生かし方が興味深いです。
また、小さな生き物の話なので、水の描かれ方が全く違うのも細かいです。表面張力でしずくとなり、雨が降れば雨粒が大きくて虫たちが危険に晒されます。サイズの違いによる脅威の違いが面白いですね。
ストーリーはベタですが、描写が光る作品でした。
『フランケンウィニー』
少年ヴィクターは、自分の友人である犬のスパーキーを亡くして嘆き悲しむ。雷の力を借りてスパーキーを蘇らせるが、その力がクラスメイトにバレてしまう。クラスメイトたちは死んだ生物を生き返らせ、恐ろしい事態になってしまう。
町は陰気で、周囲の大人はずるいし、いじめっ子もいるし、信用できないクラスメイトもいます。
そんな町で飼い犬を友達として愛し、死んだ犬を科学の力で蘇らせます。
しかもオチもテンプレ的な展開を通らずそうなるんだ!? と驚きました。
しかし、倫理的に正しい話ばかり見ていて、たまにこういう作品に出くわすと癒されます。正しさは大事なんですが、繰り返し語られると疲れてしまうことがあるからです。
正しいキャラクターが出てこない世界で、主人公も正しいわけではなくて、でもそれなりに生きていくという話は、息抜きになりました。
ストップモーションですが、3Dではあるということで3Dの枠に入れています。
2Dアニメ
『ラマになった王様』
わがまま放題の王様、クスコは魔女イズマを首にして恨まれ、ラマに変えられてしまう。心優しい農夫パチャに助けられるが、クスコはパチャにもわがままな態度を崩さない。しかし王宮を目指してパチャと旅をするうちに、クスコの心に変化が起こり始める。
男と男の友情で呪いを解くストーリーでした。
超わがままな王様クスコは、平凡なおじさんパチャの優しさや真面目さにより、友達を持つ重要さに気づきます。
このパチャも本当にいい人で、わがまま放題のクスコを「こういう人間にもいいところがあるのではないか?」と思い続け、実際クスコが善良さを見せたときには喜びます。
すべてが終わったあと、クスコとバシャの家族が仲良くやっているのも好きです。
内容自体はかなりギャグでした。ヴィランもかなりのポンコツで、かっこいい悪というより面白キャラでした。
笑って癒されるいい映画でした。
『ノートルダムの鐘』
醜い外見に生まれついたカジモドは、ノートルダムの鐘つき男として人と接せず暮らしていた。しかしジプシーの女性、エスメラルダと出会い、恋心を抱いたことから少しずつ変わっていく。同時に、カジモドの保護者であるフロロー判事は、エスメラルダに歪んだ欲望を抱きはじめていた。
呪いをかけられたわけでもなく神罰でもなく、ただ偶然人と異なる外見に生まれついたカジモド。彼が劣等感にさいなまれながらも努力をして自分の人生を肯定していくところがよかったです。
最終的に搾取から逃れ、自分の人生を歩んでいこうとするカジモドの姿は好きでした。
悪役、フロロー判事も印象的なキャラクターでした。
自分を正当化するところが生々しいというか、実在しそうな悪役なのですよね。犯罪ってやっている人は悪いと思っていないことも多いし。
好きな女のために町ひとつ滅ぼそうとしたのは怖かったです。
『ムーラン』
とある国で異民族の侵略が始まり、男たちは徴兵されていった。少女ムーランは、体調が悪い父親に代わり男装をして軍に入る。そこで厳しい訓練を受け、兵士となった。ついに本格的な戦闘が始まり、ムーランは機転を利かせて武功を上げる。
男装の女性が女性には行けないところにたどり着き、最後に女性の姿で状況を打破する構成が美しかったです。
男装ヒロインは好きですが、結局女に戻って男に愛されるのが幸せなんだ、というオチになると今までの展開は何? となってしまいます。ムーランは結果的には女性の姿に戻りますが、それは男の状態より弱くなったわけではありません。
恋愛要素もあっさりしていて、匂わせる程度だったところが心地いいです。ムーランにとって恋愛は必須のものではありませんが、もしかしたらそういう展開もあるかもしれない、というオチが好きです。
『トレジャー・プラネット』
聡明だが問題児の少年、ジムはトレジャー・プラネットに向かう宝の地図を手に入れ、冒険へと旅立つ。しかし、ジムに与えられたのは下働きの仕事だった。ガラの悪いサイボーグのシルバーに弟子入りさせられ、掃除や皿洗いをする毎日だったが、シルバーとジムの間には奇妙な絆が生まれ……。
男同士の関係性の話でした。新鮮な内容で面白かったです。
船を乗っとり、宝を独り占めにしようとしていた悪役が、主人公のジムに思い入れを持つようになってしまい、最終的に自分を危険に晒してでもジムを助けます。
「この場面でついついジムのことを好きになってしまったんだろうな」という部分がたくさん用意されているので、唐突感がありません。そりゃ、情は沸くだろうな……と思います。
悪人がきちんと罰されないラストは、正しいとは言えないでしょう。しかしたまには悪い人間との関係性に夢を見てもいいのかもしれないな、と思いました。
別れのシーンでの、美しい言葉の繰り返しが印象的でした。
以上です。興味があるものがあればぜひ見てみてください。