今回は男性主人公のディズニー映画をまとめてみました。
ディズニー=女性向けというイメージがあるので、そこから離れて、男性向けのディズニー映画について語っていこうと思います。
3D
『バズ・ライトイヤー』
故郷の星への期間を目指す人々のため、ハイパー航法の試験飛行を行うスペース・レンジャーとして宇宙に飛び出すバズ・ライトイヤーは、ウラシマ効果によって星で暮らす人々との時間がずれていく。ハイパー航法の実験が打ち切りになり、人々が故郷を目指さずこの星で生きていくことを決めたとき、バズは勝手にハイパー航法の試験を実行する。
バズが懐かしい感じのアメリカのタフガイですが、「トイ・ストーリーのおもちゃ、バズ・ライトイヤーの原作」としてはこれはこれでリアリティがあります。
冒頭からほのかな恋心を持っていた相手がパートナーを持ち、家族を築き、人生をやっていっているのに、バズは若いまま、ひたすらハイパー航法の試験を繰り返していきます。愛はありますが、業が深い描写でした。
実質的に時を超えたバズは好きだった人の孫と出会いますが、彼女とラブストーリーは展開しないところがいいですね。かつて好きだったあの人とは別の人で、あくまで面影がある人なところが割り切っていて好きでした。
『ソウルフル・ワールド』
学校の音楽教師をしながら生計を立てているジャズピアニストのジョーは、ある日有名ミュージシャンとの共演のチャンスを得る。喜んだのもつかの間、ジョーは穴に落ちて半死半生の状態になり、魂だけの姿になってあの世に行くことを要求される。ジョーは何とか行き返るために生まれる前の魂である22番を利用しようとする。
主人公のジョーはピアニストとして成功することを夢見ています。しかし、その一方で学校の音楽教師としてピアノを教えることや、喫茶店で演奏をすることをどこか軽蔑しています。
しかし、作品の途中で夢を叶えたジョーは、子どもたちや一般の人たちに音楽を教えたことも、自分の人生の一部だと気づきます。
生まれる前の魂としてジョーと出会う22番が、自分のネガティブさに対して別の見方を得ていくのもよかったです。
『ラマになった王様』
わがまま放題の王様、クスコは魔女イズマを首にして恨まれ、ラマに変えられてしまう。心優しい農夫パチャに助けられるが、クスコはパチャにもわがままな態度を崩さない。しかし王宮を目指してパチャと旅をするうちに、クスコの心に変化が起こり始める。
男と男の友情で呪いを解くストーリーでした。
超わがままな王様クスコは、平凡なおじさんパチャの優しさや真面目さにより、友達を持つ重要さに気づきます。
このパチャも本当にいい人で、わがまま放題のクスコを「こういう人間にもいいところがあるのではないか?」と思い続け、実際クスコが善良さを見せたときには喜びます。
すべてが終わったあと、クスコとバシャの家族が仲良くやっているのも好きです。
内容自体はかなりギャグでした。ヴィランもかなりのポンコツで、かっこいい悪というより面白キャラでした。
初期のクスコが倫理のない男なので、ヴィランとも倫理のない男VS倫理のない女のやりとりになって新鮮でしたね。
アリの群れの中の発明家フリック。彼は荒くれもののバッタ一味に供える食物をなくしてしまった。その責任を取るために巣の外を出て、バッタと戦ってくれる助っ人を探す。やってきたのは売れないサーカス団の一味だった。サーカス団は興行と勘違いして来たと言い、アリたちの元を離れようとするが……。
虫の生態を反映したキャラクター作りが面白かったです。
目の模様があるチョウはそれで鳥を脅かしたり、「レディバグ」と呼ばれるてんとう虫は女性的に見られることを気にしていたり。
バッタが悪役なのは蝗害からの連想なのでしょうか。
働きアリにオスもいましたし、完全に現実と同じわけではないですが、生かし方が興味深いです。
ストーリーとしては強いものに弱いものが逆らうというベタな話です。
元々強いキャラクターではなく、ヘタレだったり弱虫だったりするキャラクターが大きな敵を倒すのが爽快感がありました。
お姫様もだいぶネガティブだったのが新鮮でした。
『カーズ』
レーシングカーのマックイーンは、ひょんなところから田舎町に迷い込み、そこでのトラブルから道をきれいにすることを命令される。もうすぐトップの車を決めるレースが行われる中、しぶしぶ舗装作業を始めたマックイーンは、少しずつ周囲の人たちになじんでいく。
主人公マックイーンはいけ好かないやつで、周囲をナメ切っています。彼が徐々に田舎町の車たちに心を許し、本音で話せるようになります。
マックイーンが周囲をナメているときと、本音できちんと話すときの、表情や声の演じ分けがよかったです。似たようなことを言っていても、文脈ががらりと変わります。
これは映画ならではの表現ですね。
レーシングカーであるマックイーンの走りを見るのも、全員車です。スタジアムがどういう構造をしているのか不思議です。
きかんしゃトーマスのような、人間と知性のある乗り物が共存するような世界観を想像していたので驚きました。でも、これはこれで興味深いです。
『ベイマックス』
メカや発明が好きな天才少年、ヒロ。しかし彼が飛び級入学のために作った発明は、大学の火事によって焼け、さらに兄も失う。失意のうちにいたヒロを支えようとしたのは、兄の残したケアロボット、ベイマックスだった。
若い人はまだかもしれないけれど、ほとんどの人は親しい人の死に一度は出会ったことがあるのではないでしょうか。「死者は思い出の中にいる」と言われても、実感するのはなかなか難しいものです。
今作は死の受容、そして思い出の中にいる死者の発見を丁寧に描いています。普遍的なテーマであるだけに、方法を間違えると陳腐になってしまうけれど、ベイマックスというロボットを間に置くことによって「死者の思い出」をヒロに見せていきます。
もちろんヒーローものの側面もあり、アクションも素晴らしいです。ふたつの要素が両輪となって出来上がっている作品です。
『フランケンウィニー』
少年ヴィクターは、自分の友人である犬のスパーキーを亡くして嘆き悲しむ。雷の力を借りてスパーキーを蘇らせるが、その力がクラスメイトにバレてしまう。クラスメイトたちは死んだ生物を生き返らせ、恐ろしい事態になってしまう。
町は陰気で、周囲の大人はずるいし、いじめっ子もいるし、信用できないクラスメイトもいます。
そんな町で飼い犬を友達として愛し、死んだ犬を科学の力で蘇らせます。
しかもオチもテンプレ的な展開を通らずそうなるんだ!? と驚きました。
しかし、倫理的に正しい話ばかり見ていて、たまにこういう作品に出くわすと癒されます。正しさは大事なんですが、繰り返し語られると疲れてしまうことがあるからです。
正しいキャラクターが出てこない世界で、主人公も正しいわけではなくて、でもそれなりに生きていくという話は、息抜きになります。独特で面白かったです。
『モンスターズ・インク』
モンスターが暮らす世界。モンスターたちは人間の子どもの悲鳴をエネルギーとして暮らしていた。サリー(サリバン)は、人間の子どもを驚かせ、悲鳴のエネルギーを回収するのが仕事。しかしある日モンスターの世界にひとりの人間の女の子が迷い込み、サリーとその相棒マイクはてんてこ舞いになる。
幼い子どもを目の前に、庇護欲や父性に目覚め、ブーを守ろうとするサリーと、それについていけないマイク。
男同士の面倒な感情を感じると同時に、「子どもを見てパッと守るべき対象だと思えるかどうか」という描写には考えさせられました。
私も子どもは守られるべきものだとは思いますが、大人みんなが常にそう思えるのであれば、子どもへの暴力は発生しないはずです。
ブーとサリー、マイクは種族が違うのでその差の描写はマイルドになりますが、リアルな人間がこれをやっていたとしたら生々しかったでしょうね。
それでも三人組の関係や、やりとりはかわいらしく、子どもって迷惑な部分もあるけど、どうにも引き付けられる部分もあるよね……と思いました。
『シュガー・ラッシュ』
「フィックス・イット・フェリックス」というゲームの悪役のラルフ。彼は他のゲームの登場人物とけんかをしてしまい、メダルを求めて別のゲームへと渡る。どたばたの末にたどり着いたのがお菓子の国のレースゲーム「シュガー・ラッシュ」。ラルフはそこで生意気な少女ヴァネロペと出会う。
このヴァネロペという子、なかなかディズニー主人公らしからぬキャラクターです。初対面の大人であるラルフにずけずけとものを言うし、すぐに調子に乗るし、他のキャラにも挑発的なので不具合を抱えていなくてもあんまり友達ができないタイプだと思います。
でもこういう「はみ出し者」のキャラでないと、ラルフと友達になることはなかったんじゃないかなと思います。ヴァネロペがあまり性格がよろしくない少女だったからこそ、境遇に共感して協力したのではないでしょうか。
世の中の子どもは「いい子」だけではないし、いい子だっていつでもいい振る舞いをできるとは限らないです。コミュニケーション能力に難がありそうな二人が人間的に成長して、夢を叶える姿にほっとしました。
2D
『トレジャー・プラネット』
聡明だが問題児の少年、ジムはトレジャー・プラネットに向かう宝の地図を手に入れ、冒険へと旅立つ。しかし、ジムに与えられたのは下働きの仕事だった。ガラの悪いサイボーグのシルバーに弟子入りさせられ、掃除や皿洗いをする毎日だったが、シルバーとジムの間には奇妙な絆が生まれ……。
男同士の関係性の話でした。新鮮な内容で面白かったです。
船を乗っとり、宝を独り占めにしようとしていた悪役が、主人公のジムに思い入れを持つようになってしまい、最終的に自分を危険に晒してでもジムを助けます。
「この場面でついついジムのことを好きになってしまったんだろうな」という部分がたくさん用意されているので、唐突感がありません。そりゃ、情は沸くだろうな……と思います。
悪人がきちんと罰されないラストは、正しいとは言えないでしょう。しかしたまには悪い人間との関係性に夢を見てもいいのかもしれないな、と思いました。
別れのシーンでの、美しい言葉の繰り返しが印象的でした。
『アラジン』
とある国の泥棒、アラジンは、王国の姫ジャスミンと出会う。逮捕され洞窟に放り込まれたアラジンは、魔法のランプを手に入れる。そこから現れたジーニーは、アラジンに三つの願いを叶えると持ちかけた、ジーニーの力で大金持ちの王子になったアラジンは、ジャスミンに求婚するが……。
搾取する側が搾取される側への執着を捨てるシーンが印象的な作品でした。アラジンはジーニーの力で王子様となり、ジャスミンとの婚約にこぎ着けますが、ジーニーの力を失うことを恐れジーニーを自由にしません。
アラジンがジーニーの自由を願うことで、ふたりは本当の友達になれた、というラストは美しかったです。
ヒロインのジャスミンもまた、王女だからという理由で父親に縛られていますが、「王女は好きな相手と結婚していい」と王が決めたことでアラジンと結ばれます。
アラジンも王様も相手が嫌いなわけではありませんが、自分の都合で相手をコントロールしようとしてしまいます。その執着を捨てることで、みんながハッピーエンドを迎えるのがよかったです。
以上です。興味があれば見てみてください。