あらすじ・概要
普段私たちが何気なく使っている薬は、実は世界史を買えた薬かもしれない……。サイエンスライターである著者が、薬の歴史やその成り立ち、医者たちの感染症への攻防を描く。薬の見方が変わるかもしれない一冊。
医学の歴史と倫理の進歩には関係がある
アヘンとその派生であるモルヒネやヘロイン、鎮痛剤であるアスピリンなど、有名な薬の話が多いです。薬学に詳しくなくても、名前くらいは聞いたことがあるのでは。
人間の免疫システムを破壊する病気、AIDSに関する医者たちの戦い、性感染症である梅毒の蔓延と弱毒化など、歴史的な医学VS病気についても書かれています。
今は当たり前に飲まれている薬は、実は科学者の努力の積み重ねで生まれたのは面白いです。
一方で、この本には少々倫理に欠けた科学者も出てきます。後年科学的根拠のない思想にドはまりしたり、他人の業績を奪い取ろうとしたり。知識を持ち、科学的思考が可能であっても、その人が善人かは別の話なのでしょう。
科学がなければ人間の倫理も進歩することがなかったのだろうと思います。
たとえば「医者が清潔にすれば患者への感染症が防げ、死亡率が下がる」という価値観は、発表した当時はなかなか受け入れられませんでした。医者たちは自分が不潔な感染源であることを受け入れがたかったのです。
今は医者が自分の手を入念に消毒するのが当たり前になっています。
価値観は変わっていくものですが、それに対して医学の進歩が関わっている部分は大きいのだろうなと感じました。