ブックワームのひとりごと

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『西洋骨董洋菓子店』よしながふみ 白泉社 感想 ケーキ屋を舞台にした男同士のコメディ

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西洋骨董洋菓子店 1

 

あらすじ・概要

ボクサーの神田エイジは、網膜剝離によってボクシングの道を諦めざるを得なかった。彼は「アンティーク」という洋菓子店でパティシエの見習いとなる。そこではベテランパティシエだが必ず男性と痴情のもつれを起こす小野裕介、御曹司だが口の悪いオーナー橘圭一郎がいた。

 

コメディだけど終盤はサスペンスになる

弾丸のようにまくしたてられるケーキへのうんちくがすごいです。でもここに興味がなくても読み進められます。

 

主人公はボクサーでしたが、網膜剥離という病気でボクシングを辞めざるをえず、第二の人生としてパティシエ見習いとなります。

パティシエとしての才能はありますが、元不良なのでガラが悪く、当時の知り合いが訪ねてくることも。

その師匠奔放なゲイ小野。ノンケでもゲイでも好意を持った人をたらしこんでしまうという能力を持ちます。作中でも何人もの人と関係を持っています。

穏和な外見とは裏腹に刹那的な生き方をしています。純朴な青年、小早川千影に出会うことで少し価値観が変わっていきます。

また、オーナー圭一郎はそんな彼に高校時代ひどい暴言を吐いてしまい、そのことを気にしています。再開して仕事をすることになりましたが、その言葉はお互いに心に引っかかる問題になっています。

小早川千影は圭一郎の付き人ですが、物覚えが悪くバイトとしても戦力になりません。しかしその素直な性格が憎めません。

 

ストーリーは洋菓子店をめぐるコメディ。展開の早い会話シーンでポンポン面白い台詞が出てきます。

同性愛者が出てくるのでBL要素はありますが、それが全てではない感じです。登場人物には異性愛者もいますし、家族関係や友人関係が重視されることもあります。

終盤はとあるキャラクターをめぐるサスペンスになっていきます。

解決に関しては唐突感がありますが、キャラクター同士の関係の謎が明らかにされたのは面白かったです。

 

一方で、昔の作品ゆえジェンダー観にうっとなることもあります。特に同性愛者のからかいは悪趣味ですね。著者のよしながふみが悪いのではなくて、昔はこの調子が普通だったのだろうと思いますが。

描写や価値観に、ジェンダー観の変遷を感じます。