あらすじ・概要
19XX年、日本では連続して火山の噴火や地震が発生していた。潜水艦の運転手である小野塚は、学者の田所とともに海底の調査に乗り出す。徐々にわかってきたのは、「このままでは日本列島は沈没する」ということ。人々は度重なる災害に疲弊し、不安になっていた。
移民のリスクを描きながら、それでも生き延びる人たちを肯定する
有名作のコミカライズだからなんとなく手にとってみましたが、思ったより面白かったです。原作も読んでみたくなりました。
「最近地震多いなあ」というところから、加速度的に社会がおかしくなっていき、最終的に日本が消えてしまうに至る、というストーリーが怖かったですね。
人の心がすさみリンチや暴行が起こり、被災地で冬を越せないとデモで政府に訴え、日本を脱出する船や飛行機に乗るまで長い長い徒歩の旅をする……という一般民衆の振る舞いも迫力がありました。本格的に日本から逃げ出す前に地震や噴火で交通網がずたずたになり、人々は着の身着のまま歩いて逃げざるをえなくなります。山の多い日本で山を越えて港を目指していくのが悲しかったです。
「日本人が100万人単位で移民するのはその土地の人間にとっては侵略に等しい」ということが繰り返し語られますが、結局その問題は解決しないまま終わります。日本人たちが日本を脱出したその後も、差別や偏見、貧困、隔離政策にさらされ苦しむでしょう。
しかしこの作品は移民批判ではなく、「生きたいと望む人間には逃げさせてやればいいのだ。つまらない感傷でそれを引き留めるべきではない」という話でもあると思います。
国を愛していても国と心中するほどの義理はありません。むしろ極限状態でもしぶとく生存を望む人間の生命力を感じました。
昔の作品だからいかんせんジェンダー観はひどいです。このシーンで裸になる必要性はないでしょう! が、おっさんばかり出てくるのでそこまで気になりません。メインキャラに女性がいたら読んでいて気まずかったかもしれません。
おっさん同士がひどいジェンダー観で話し合っているのはまだ精神的に気楽ではあるんですよね。被害を受ける女性がいないので。
読み終えてすぐに九州で、関東で地震があり、はからずも時事問題に関する読書体験になってしまいました。こんなことは現実で起こってはほしくないですが、