あらすじ・概要
「新大陸発見」による文化の変化は「コロンブスの交換」と呼ばれる。しかしその「交換」は「侵略」に等しいものだった。先住民が品種改良を重ねて食べられるようになったジャガイモやトウガラシ、トウモロコシは、「新発見」として諸外国にもたらされる。一方で先住民たちは病気に苦しんでいた。
侵略者に奪われたもの、残されたものの話
サクッと読める柔らか目の歴史書でした。
著者が繰り返し語っているのは、「ヨーロッパにとっての『発見』は現地の人たちにとって不断の努力でなされたもの」ということです。
ジャガイモやトウガラシの品種改良を行ったのは現地の人ですし、富を保管するような倉庫もありました。しかし、ヨーロッパ人はそれを「発見」し、文化を破壊するとともに自分の成果としてそれを持ち帰りました。
イモ類やトウガラシの農作物、梅毒という性感染症は日本にも到達し、歴史に影響を与えました。
ヨーロッパ人は馬や牛、黒人奴隷も連れてきました。一部の馬や牛は野生化し、それを追って捕まえる仕事が生まれます。黒人たちは過酷な労働に苦しめられましたが、南北アメリカにアフリカの音楽をもたらします。侵略によって、社会は大きく歪められ、広がっても行きます。
同時に、ヨーロッパ人の来訪は天然痘などの病気を発生させ、免疫のなかった先住民の多くが死亡しました。一族が全滅してしまったところもあります。
「コロンブスの交換」という柔らかい表現だけでは言い表せない、侵略行為に等しい状況でした。
南北アメリカの先住民たちは、白人たちに文化を破壊され、虐殺されました。
少々先住民を美化するきらいもありますが、これも著者が持つ怒りゆえなもしれません。
時計の針を元には戻せません。しかし、現代の人間には社会の富を分け合い、搾取が起こらないようにする義務があると思います。
最近また民族対立がきな臭くなっていて、他文化の人を人と思わない発言を見かけることもあります。その繰り返しで行きつくところは搾取と虐殺なのだと思うと、やはり差別はよくないです。いつの時だって相手が人間であることを忘れたくないです。
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