あらすじ・概要
アーティストでありデザイナーの著者は、「象になってみたい」と思いつく。しかしシャーマンに「ヤギがいい」と勧められヤギに転向。著者はそれぞれの分野の専門家を訪ね、脳や骨格、精神の部分からヤギになる方法を模索する。
ヤギになりたい人に優しく専門知識を教えてくれるのすごい
トンチキ本ですが、各業界のプロが著者の「ヤギになりたい」という願いを真剣に考察しているのが面白かったです。
こんなわけのわからないことをしている人をよく追い返さないなあ!
動物の骨格について、脳について、消化器官について、専門家が解説してくれるのは楽しかったです。
動物になりたいと思い行動することは、えてして人間と動物はどう違うか探求することでもあります。生物学の不思議に分け入っていくアーティストの著者が印象的でした。
個人的に面白かったのは、ヤギの保護団体を運営している人の話です。ヤギへの愛がすさまじいけど、この人なりの道理があることもわかります。どんな人も話してみないとわからないですね。
作品の本題ではないですが、著者もお金がなくて父親と同居していたり、ロンドンの家賃が高すぎてひとり暮らしできなかったりの世知辛いエピソードも興味深かったです。アーティストの金がないのは日本とあまり変わらないんですね。
作品の一部にヤギの解剖があり、解体されたヤギの写真がそのまま出てくるので、グロ系が苦手な人は気をつけてほしいです。私は薄目で見ました。
「ヤギになりたい」と思って実行することは世の中の役に立たないと思いますが、それでもこういう本が出て世の中を楽しませるならいいのかもしれないです。
唐沢孝一『都会の鳥の生態学–カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰』中公新書 感想
海の哺乳類を解剖する生物学者の日常と、生き物の不思議―田島木綿子『海獣学者、クジラを解剖する~海の哺乳類の死体が教えてくれること』