あらすじ・概要
官僚になった二人の青年は、社会を変えようと奔走する。しかし時の総理大臣には、ある奇妙な秘密があることを知ってしまう。表題作「国家心中」や、自殺した人をよみがえらせることのできる店の話「愛の式日」など、人間の感情と関係性を巡る短編集。
悪趣味で巨大感情な短編集
悪趣味~!! だけど面白いです。
一番印象深いのは表題作『国家心中』でした。官僚BLか、珍しいなあと思ったら後半から物語は予想のつかない展開になっていきます。
最後の取り返しのつかないオチに、しばらく呆然としてしまいました。続きを考える必要のない短編でしかできない展開でした。
その次に「愛の式日」が面白かったです。自殺した人をよみがえらせることのできる店に、ある日お金持ちのお嬢様がやってきて……。
男も女もイカれてる愛の物語。フィクションでしか味わえない、味わってはいけない背徳感がありました。
最初から『春琴抄』のオマージュとして書かれたのかと思ったら、作者によるとそれは後付けの部分のようです。後付けでこんなにしっくりくるのはすごいですね。
死者が残した眼鏡をめぐる話、「めがねの弔い」も好きでした。これはそこまで闇が深くないような。
「好きって言うと怖がられそうだけど……私は好き……」みたいな作品の連続で面白かったです。
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