あらすじ・概要
大量の収納がある家を建て、それを誇りに思っていた著者。しかし事情があって家から退去することになり、大量のものと、自分の浪費癖に向き合うこととなる。ものに執着し続けた生活と、そこから生まれた家を片付けていく苦労を描いた、反省コミックエッセイ。
物欲の恐ろしさを感じる怖いコミックエッセイ
ある意味ホラーみたいなコミックエッセイです。序盤は著者の買ったものへのこだわりの強さ、後半はそのものがあふれた家から引っ越す顛末が語られます。
恐ろしいのは著者の浪費家っぷりなんですよね。
納得のいくものが得られるまでものを何度も買って、しかも過去のものをちゃんと捨ててなかったり、何かにハマったら後先考えずにコレクションしてしまったり。
客観的に見ればおかしいんですが、家族がみなお金のことに鈍感なので今まで気づかないまま生活してしまっていました。
この家にひとりでも金銭感覚がちゃんとした人間がいればこんなことにはならなかったでしょう。
家を手放すというトラブルがあって初めて、家族は自分たちの家庭の問題に立ち返ります。
倹約家の一家に育った私としては「そこまでしないと気づかないんだ……」と思いますが、人間「これが普通だ」と思ったらそこから抜け出せないものなのかもしれません。
家の片づけに関するドタバタした状況、あれだけ大切にしていたものをすべて捨てなければならないもの悲しさが心に刺さりました。
どんなものもいつか捨てなければいけない日が来ますが、少しずつお別れをしておけばここまでひどいことにはならないんですよね。
断捨離やミニマリスト生活もやりすぎはどうかと思うんですが、日々のものとのお別れをおろそかにしてしまうと、雑に捨てるしかなくなる、という事実が恐ろしかったです。
「こんな愚かな人間の漫画は読みたくない」と思う人もいるかもしれませんが、こういう失敗がきちんと共有され出版物として公開されるのは、私は健全なことだと思います。自分の愚かさと向き合うのも、表現の大事な役割だからです。