あらすじ・概要
子どもたちは徐々にことばを学んでいく。その姿に、言語学者はことばの中の不思議や、真理を見る。子どもたちのかわいらしい言い間違いが、なぜ言語学者には興味深いのか。ことばの発達からことばの真髄を見出そうとする本。
ことばのあいまいさを学んでいく過程でことばを知る
言語学者から見た子どもの言葉の発達。子どもを観察することで日本語をはじめとする言語の面白さがわかります。
ことばのルールにはあいまいなところがあり、そのあいまいな部分を子供が理解するのにはしばらくかかるというところが面白かったです。
たとえば英語の動詞の受け身の特殊変化や、「と」と「か」の助詞の意味の違いなど、子どもは何度も教えても間違えてしまいます。しかしやがて文法のあいまいでハイコンテクストな部分を理解し、普通に話せるようになっていきます。
一方で、大人の世界で当たり前として受け入れられていることばのルールに子どもは疑問を持ちます。先入観がないからこその本気の間違いに、本の中の言語学者たちは感動します。
「文法がわかる」と「わからない」の間を如実に表現してくれる子どもは、言語学者にとって得難い師でもあるのです。
科学が発展しても世界の神秘性が失われるわけではないですが、子どもの発達というものもそのひとつだと思います。ことばも話せないコミュニケーションも取れない赤ん坊が、やがてきちんと話せるようになります。理屈で説明はできるでしょうが、「成長」の神秘性はなくなりません。
厚みのわりに字が大きいのでさくっと読めるボリュームでした。イラストもかわいいです。
人間にとってことばを学ぶとはどういうことなのか、思いを馳せたくなる本でした。